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整形外科専攻研修医

2013/02/01

 整形外科の特徴としては、取り扱う領域は頚椎から指先、足先までの四肢と体幹にわたる運動器であり、実に広範囲であり、疾患としては先天性のものから、高齢化による退行性疾患、腫瘍、あるいは交通事故などの災害性のものなど多岐に渡ります。したがって専門化、細分化の流れは他科以上に進んでいます。整形外科は全国的には内科、外科に次ぐ第3の人数であり、高知県内には200名近い整形外科医が勤務されています。高知大学をはじめ複数の優れた基幹病院がすでに存在しているなかで、当センターを2005年に開設するにあったっては、当科としては他院のコピーであってはならず、今まで高知県になかった特徴ある専門家集団による最先端医療チームを目指しました。したがって、何でもできます、といった偽りの看板は掲げず、県内の約200名の整形外科の先生方と役割を分担し、病診連携を推進することが使命と考えています。たとえば、高齢者の骨粗鬆では骨塩定量器は設置せず、すべて地域の医療機関におまかせし、外来リハビリ、関節内注射、ブロック注射などは一切やっていません。また、先天性股関節脱臼などの小児整形疾患は県立療育センターに全面的にお願いしています。術前の検査はなるべくかかりつけ医でしていただき、原則として病診連携で紹介された患者さんのみを診察して外来診療を最小限にして、手術と救急対応に全力をあげることを目標にしています。救急救命センターにおける外傷治療、関節、骨軟部腫瘍、脊椎を4本柱にしています。スタッフは、時岡(脊椎)、福田(関節)、黒住(外傷)、大森(外傷)、中田(骨軟部腫瘍)、土井(脊椎、外傷、一般整形)、西山(外傷、一般整形)、阿部(専修医)以上の8名です。
 2005年に開院したばかりで、スタッフは20歳代1名、30歳代4名、40歳代3名であり、若くて新しいもの好きです。21世紀の新しい整形外科を作ろうとして集まっています。伝統がない分、なんのしがらみもなく新しい先端医療ができます。これまでの整形外科といえばお年寄りの言いなりになって痛み止めを注射したり、救急車が來るのを待っていたりする受身の病院が数多くありました。当センターでは、ヘリに乗って現場まで出向き、初期治療から関わるようにして、積極的に出て行くようにしています。従来の枠にとらわれず、おもいっきり仕事ができる職場です。

 次に、各分野での特徴を示します。

1.外傷(担当:黒住、大森、土井、西山、阿部)

 最近の統計で日本において防ぎえた外傷死が40%もあったと報告されています。その原因として外傷患者を集中して診療にあたる専門施設が少ないということが挙げられています。高知医療センターでは救命救急センター開設以来、外傷患者を積極的に受け入れており、高知県における防ぎえた外傷死を少しでも少なくするため、外傷センター的役割を目指しています。また当センターは高知県全域より救急患者を受け入れるため、救急患者のヘリコプター搬送を積極的に行っていますが、外傷患者においては整形外科の外傷スタッフもヘリコプターに同乗し、現場からの治療に参加しています。
 近年、日本における外傷診療の質の向上のため外傷初療ガイドラインJATEC(Japan Advanced Evaluation and Care)というものができました。当院の整形外科外傷スタッフのほとんどはJATECコースを受講し、習熟しており、多発外傷患者においても初療より積極的に診療に携わっており、さらに集中治療においても救急医と連携をとりながら治療にあたっています。また多発外傷患者の治療として早期内固定ETC(early total care)が外傷後の合併症を減少させると言われており、当センターでは患者の状態が許せば可能なかぎり早期内固定をめざし、髄内釘、プレートなどは常備し、緊急で手術が行える状態にしております。
 骨盤(寛骨臼)骨折は以前は牽引などで長期臥床で治療していることが多かったですが、ここ数年前より内固定を行うようになってきております。当院でも不安定な骨盤骨折、関節内骨折である寛骨臼骨折は積極的に内固定を行っており、術後翌日より座位歩行訓練を開始し非常に良い結果を得ています。
 骨粗しょう症患者における骨折が非常に増加しています。そういった患者においては内固定が困難ですが、近年それらを解決するために新しい固定システムが開発されています。その一つにロッキングシステムがあり、これはプレートとスクリューがロックすることにより、体内式創外固定として機能し、今までのプレートに比べ固定性にすぐれ当院では適応があれば積極的に使用しています。またプレート固定においては早期骨癒合が期待でき、小皮切、低侵襲であるMIPO(Minimam Invasive Plate Osteosynthesis)を可能な限り行っています。
 外傷スタッフには外傷の勉強のためにドイツ留学を経験している医師が2人おり、常に最先端で質の高い骨折治療を意識し、日々診療にあたっています。また患者さんの早期社会復帰をめざし、できる限り早期手術、早期リハビリテーションを行うよう心がけています。

2.関節外科(担当:福田、西山、中田)

 変形性関節症、特発性骨壊死、関節リウマチなどの高齢者の慢性疾患に加えて、靱帯損傷、軟骨損傷などのスポーツ外傷を主に治療しています。当院開院から平成18年3月末までの間の関節手術は約180例でしたが、その大半は関節鏡視下手術と人工関節置換術です。
 関節鏡視下手術は小皮切による低侵襲手術のため術後の痛みが少なく、短い入院期間での治療が可能です。また筋肉へのダメージが少ないため機能回復も早く、早期復帰を希望するスポーツ選手や、合併症の多い高齢者には特に有用な手術法です。膝関節では十字靱帯損傷、半月板損傷などが主な対象となりますが、高齢者の変型性膝関節症における半月板断裂の合併は非常に多く、鏡視下手術が奏効する症例も数多くあります(図1)。

 近年、肩関節領域における鏡視下手術が全国的に注目されていますが、高度な技術と多彩な専用手術器具が必要なことがその障壁となっており、残念ながら本県はまだ全国レベルに達していません。当院開院前の平成16年度より準備を開始し、開院以降は全症例の約80%が鏡視下のみで治療が可能となっています(図2)。対象疾患では腱板断裂が最も多いのですが、いわゆる「五十肩」として適切な治療を受けらず手術時期を逸してしまうケースもしばしばあります。腱板断裂と五十肩との鑑別は肩の専門医でも非常に難しいこともあるのですがその後の治療方針がまったく異なるため、確定診断にはMRIや関節造影後CTを用いています(図3)。五十肩でよくならないという患者さんがあれば一度ご相談下さい。

 今年度の診療報酬改正により手術手技料がおおむね減算されるなか、内視鏡手術はすべて3000点加算になりました。鏡視下手術に必要なディスポーザブル器具の値段を考慮するとまだ十分とはいえませんが、鏡視下手術に対する社会のニーズは今後ますます高まっていくものと予想されます。
 低侵襲手術という観念は関節鏡のみでなく人工関節手術の領域にも広がってきています。MIS(minimally invasive surgery)という言葉はしばしば新聞などにも紹介され定着しつつありますが、長期的にどの程度メリットがあるのかは現時点では明らかではありません。膝関節の場合、関節すべてを置換する全置換術(TKA)と片側置換(UKA)の2種類の手術方法があります。当科では関節の破壊が一側のコンパートメントに限局する症例にはUKAを選択し最近の数例はMISで施行していますが、ほとんどの症例が術後3日以内に独歩可能で抜糸後に自宅復帰できています(図4)。TKAの場合にはブラインドの部分があるためコンピューターナビゲーションとの併用が必須ですが、CTフリーのナビゲーションシステムに対する厚生労働省の認可待ちの状態です。現在はMISへの移行を見据えて、筋肉への侵襲を最小限にすべく関節への進入路を改善し、従来の方法と比べて5cmほど皮切を小さくしています。当院ではリウマチ患者さんの多くを整形外科で診療しています。リウマチ治療の原則は抗リウマチ薬による炎症のコントロールですが、ここ数年の抗リウマチ薬の開発などによりリウマチ治療の状況が大きく変わってきました。以前は関節外科手術の大部分をリウマチ疾患が占めていましたが、その割合は年々少なくなってきています。特に生物学的製剤の効果は驚くべきものであり、将来リウマチは治る病気になると思われます。


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(図1)
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(図2)
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(図3)
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(図4)

3.骨軟部腫瘍(担当:中田)

 骨軟部腫瘍は、日常の診療においてしばしば遭遇する疾患です。発生頻度が低いため、診断および治療に苦慮される先生方も少なくありません。患者さんの多くは皮下の腫瘤を自覚して来院され、たいていの場合、良性(脂肪腫など)ですが、時に悪性の可能性もあります。深部に存在し、5cm以上の大きさであれば、悪性の可能性が高いといわれています。MRIやシンチにて良悪性のおおよその判断は可能ですが、病理診断が非常に重要で、手術に先立って行われます。小さい腫瘍だからといって安易に手術を行うと、悪性の場合、再発し多数回の手術の結果、切断となることもあります。また、転移をおこして死亡する可能性が高く、予後不良の疾患です。当院では地域の要望にお答えすべく、骨軟部腫瘍外来を金曜日に行い、多数の患者さんをご紹介して頂いております。治療に関しては患肢温存を基本とし、以前は切断が選択されていた症例も積極的に再建を行っております。再建には血管、皮弁が必要であり形成外科など他科の先生方とも協力して行っております。また、一部の骨軟部腫瘍には化学療法、放射線治療も有効であり、併用しています。

4.脊椎(担当:時岡、土井、阿部)

 もともと高知県内には脊椎外科の専門医がたくさんいらっしゃり、脊椎外科は盛んな土地柄です。そんな中で当センターを開設するにあたって、高度先進医療として、コンピューター支援手術(ナビゲーション手術)と脊椎内視鏡手術を開始しました。
 脊椎ナビゲーション手術とは、術前に撮影したCTをコンピューターに取り込み、棘突起などの骨に取り付けたアンテナにコンピューターから赤外線を送り、あたかもカーナビの道路地図のごとく脊椎の現在地を確認しながら手術するものです。これにより、従来は不可能であった、環軸椎の固定、頸椎、上位胸椎の椎弓根スクリュー固定が安全に行えるようになり、重篤な合併症は回避されるようになりました。脱臼骨折や脊椎腫瘍に威力を発揮しています。
 脊椎内視鏡は、皮膚に約2cmの切開を加え、内視鏡をいれてテレビモニターを見ながら脊柱の手術を行うものです。腰椎椎間板ヘルニアは最も良い適応です。傷が小さく、出血が少ないため、早期離床が可能です。しかし、手術時間が少し長くかかるため、ヘルニアが1個の患者さんに限られます。脊柱管狭窄が高度であったり、多椎間例では従来のとおり大きく切開して手術を行っています。最近では、脊椎ナビゲーションと内視鏡を併用して、脊椎すべり症の除圧固定術を行っています。ナビゲーションにより経皮的に椎弓根スクリューが刺入でき、片側からの小切開で内視鏡を使って、椎間関節と椎間板を切除して除圧し、固定術を行っています。
 頸髄症に対しては独自の椎弓スペーサーを開発し、椎弓形成術を行っています。術後の頸椎カラーは一切使わず、手術の翌日より自由に歩いてもらうという、超早期離床、超早期リハを行っています。これにより、従来の頚椎拘縮による可動域制限や頑固な肩こりが軽減しました。
 救急救命センターの使命の一つとして、脊髄損傷の受け入れに力を入れています。交通事故や労災事故などで、脊椎を骨折し、四肢麻痺となった患者さんの治療は専門医の集学的治療が必要です。緊急手術による脱臼骨折の整復、固定術が必要なことは当然ながら、人工呼吸、血圧管理などICUでの集中治療が欠かせません。脊髄損傷の患者さんを搬送するのにはヘリコプターがもっとも振動がなく愛護的であり、しかも最速です。救急車では振動が強く、激痛を生じます。連絡を受け次第、緊急手術の準備をして待機し、ヘリポートから、ICU、手術室へと即座に行けます。最近では脊髄損傷を専門とする医師が減少し、全体像を捕らえての治療ができる施設が四国には無いのが現状です。この分野では四国のセンターとしての機能を発揮できると確信しています。

おわりに

 当センター整形外科の特色である、外傷、関節、骨軟部腫瘍、脊椎について述べさせていただきました。当科は何でも屋ではなく、特殊性のある医療を地域に提供するのが使命と考えています。現在、研修先を探している若い先生方にとって、他院と比較して当科がユニークであることはお分かりいただけると思います。整形外科だからといって、骨しかみないのでは21世紀の医療では通用しません。救急の場面では他科の医師と協力して全身を治療しないと、骨盤骨折、脊髄損傷などでは救命できません。従来の枠にこだわらず、新しい整形外科を立ち上げるのが私たちの夢です。



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