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乳腺・甲状腺外科

2020/02/06

1.乳腺・甲状腺外科とは

乳がんや乳房に関する疾患の診療を行います。特に乳がんは手術のみならず、薬物療法(化学療法、ホルモン療法、分子標的治療)も担当します。
また乳がん検診などで再検査が必要と判断された方の精密検査も行います。
甲状腺疾患については主に手術を行います。

2.当科の特色

乳がんは他のがん種と比べて薬物療法が非常に有効です。乳がんの治療は手術だけで終わることは少なく、薬物療法(化学療法、ホルモン療法、分子標的治療)や放射線療法など様々な治療手段を用いて最良の治療効果を目指す、集学的治療が行われます。そのため治療を円滑に進めていくためには放射線治療科、病理診断科、形成外科、緩和ケア内科など様々な科とのスムーズな連携が欠かせません。当院はあらゆる診療科を備えた県内有数の総合病院として病状の進行や治療に伴う様々な症状への専門的な対処が可能です。乳がんの治療法は薬物療法を中心に日々進化しており、年々治療成績も向上してきています。当科では常に最新のエビデンスに基づき都心の乳がん専門病院と同等の世界レベルの診療体系を提供することを目指します。

3.担当医

科長(乳腺)

高畠 大典
平成8年卒
日本乳癌学会乳腺専門医、指導医、評議員
日本外科学会外科専門医
日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、指導医
日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医
日本遺伝性腫瘍学会遺伝性腫瘍専門医
日本遺伝性腫瘍学会遺伝性腫瘍カウンセラー
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
マンモグラフィー読影認定医
医学博士

副科長

大石 一行
平成17年卒
日本外科学会外科専門医
日本内分泌外科学会(旧甲状腺外科学会)内分泌外科専門医、評議員
日本甲状腺学会専門医
日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医
日本遺伝性腫瘍学会遺伝性腫瘍専門医
日本消化器外科学会消化器外科専門医
日本消化器病学会消化器病専門医
日本食道学会食道科認定医
日本臨床腎移植学会腎移植認定医

4.外来

 

午前

午後

午前

午後

午前

午後

乳腺外来

高畠

 

 

高畠

甲状腺外来

 

 

大石

大石

遺伝性腫瘍外来

 

 

 

高畠/大石

 

 

リンパ浮腫外来(上肢)

 

 

 

高畠*

 

 

*第1,3水曜日午後

5.乳腺疾患全身麻酔手術症例数(主に乳がん)


乳腺疾患全身麻酔手術症例数(主に乳がん)

6.診療について

  1. 診断
    乳がんの診断は主に視触診から始まりますが、マンモグラフィー、超音波検査などを行い、乳がんの疑いがあると判断された場合、病変部に針を刺して組織を一部採取し、病理検査によって確定診断を行います。
    微小な病変や石灰化病変でも吸引式乳房組織診断装置(マンモトーム)を用いてほとんど傷を残さず診断が可能です。2015年に3Dマンモグラフィー撮影装置を導入しました。

3Dマンモグラフィー撮影装置

 2. 手術

主に乳房温存術と乳房切除術が行われます。治療成績はどちらの方法でも差はありませんが乳がんのしこりの大きさや広がり、患者さんの希望などを考慮し手術の方法を決定します。しこりが大きく乳房温存術が難しい場合でも手術前に薬物療法(主に化学療法)を行う事により温存術が可能になる場合があります。乳房温存術ではできるだけ傷の目立たないきれいな乳房を残せるようoncoplastic surgeryの手法を積極的に導入しています。乳がんは腋のリンパ節に転移しやすく術前検査で転移があると判断された場合は腋のリンパ節を切除します(腋窩リンパ節郭清)。ただし近年ではリンパ浮腫などの術後の不要な合併症を避けるため、腋のリンパ節を一部だけ取って転移の有無を調べるセンチネルリンパ節生検を行う事が一般的です。当科では色素と放射線同位元素(RI)を併用した正確なセンチネルリンパ節生検を行っています。

リンパ節

 3. 乳房再建について

2013年にゲル充填人工乳房(ブレストインプラント)を用いた乳房再建術が保険適応となり当院も乳房再建用エキスパンダー・インプラント実施施設に認定され、乳房再建には積極的に取り組んできましたが昨年7月に諸事情による国内でのインプラント販売停止により一次的に人工乳房による乳房再建を中断せざるを得ない事態が発生しました。現在は代替エキスパンダー・インプラントによる乳房再建を再開していますが詳しくは乳腺外科または形成外科までご相談下さい。
またインプラントを用いず、筋肉を用いた筋皮弁による再建については従来どおり対応可能です。

乳房再建手術 手術

 4. 薬物療法

乳がんの治療において薬物療法の役割は極めて重要です。これらの薬物療法を適切に過不足なく行うことが治癒率向上には欠かせません。乳がん術後の患者さんでは多くの方で薬物療法が必要になります。薬物療法には化学療法(抗がん剤)、ホルモン療法、分子標的治療があります。どの方法を行うかは手術で採取した乳がんを詳しく調べる病理検査の結果から判断します。手術後の再発を防ぎ、治癒率を上げるために行う場合と、すでに遠隔転移がある方や再発した方に対して症状コントロール目的で行う場合の2通りがあります。薬物療法の領域は新規薬剤の導入やガイドラインの改訂なども頻回に行われており、最も進歩が著しい分野です。常に最新の動向を踏まえた最良の治療を心がけています。
 

 5. 放射線療法

薬物療法と同じく、手術後に治癒率を上げるために行う場合と、既に転移がある方や再発した方(骨や脳など)に対して症状コントロール目的に行う場合があります。当院では最新鋭の照射装置を用いて精密で安全な放射線治療が可能です。いずれの場合でも最新のガイドラインに沿った過不足のない照射を心がけています。治療は必要と判断した時に当科より放射線療法科に依頼して行います。

7.進行再発乳がんの治療について

初診時にすでに遠隔転移(骨、肺、肝臓など)がある方や手術後に再発してしまった場合、特殊な状態を除いて治癒させることは残念ながら困難です。しかし病状をうまくコントロールし長期間通常の生活ができるようにすることは可能です。治療は薬物療法が中心になりますが随時、放射線療法科、緩和ケア内科など他科との連携を図りながら治療を行っていきます。患者さんの病状を見極めた適切な薬剤の選択と副作用コントロールが極めて重要で専門医の実力が最も問われる領域です。ホルモン療法、化学療法、分子標的治療をうまく組み合わせながらできるだけ生活の質を落とさずにがんと付き合っていけるようにすることが目標です。進行再発乳がんについては新薬が次々と登場し治療成績は近年著しく向上しています。諦めずに治療を続けていくことが大切です。

8.乳がんと遺伝について

乳がんの大部分は遺伝しないとされていますが、家系内で乳がんが多発していたり、若年発症であった場合、遺伝が関与する乳がんの可能性があります。この場合、反対側の新たな乳がんの発症や卵巣がんのリスクも高くなり、さらに親族の乳がん発症リスクも高まる場合があります。遺伝が関与している乳がんかどうかを調べる方法として遺伝子検査があります。遺伝子検査は健康保険の適応外となり実費での検査となります。遺伝子検査の実施にあたっては遺伝カウンセリングを受けていただく必要があります。遺伝カウンセリングは随時行っております。詳しくは乳腺外来または主治医までお問い合わせください。

9.外来化学療法について

点滴の化学療法や分子標的治療などは初回は原則入院で行いますが2回目以降は外来通院で行います。当院では2017年に新築されたがんサポートセンターに35床の外来化学療法室を備え、がん化学療法専門看護師が在籍しており、ストレスなく安全な治療が継続できるよう配慮しています。また化学療法が長期になる可能性のある方には腕に点滴用のリザーバーを造設させていただくことがあります。これにより毎回の針刺しに伴うストレス、点滴漏れ等の懸念がなくなります。

10.リンパ浮腫について

乳がんの手術の際に腋のリンパ節を切除する場合があります。その場合術後に手術を行った側の上肢が腫れてくるリンパ浮腫が起きることがあります。残念ながら一度発症したリンパ浮腫を根本的に治癒させる方法はありませんが症状が軽いうちにマッサージやケアを行う事で症状の悪化を防ぎ、より快適な生活を送ることが可能になります。当院では医療リンパドレナージセラピストが在籍しており適切なアドバイスやケアを行います。お困りの際は一度乳腺外来またはリンパ浮腫外来へご相談下さい。

11.臨床試験について

乳がん治療は日々進歩しておりますが、より良い治療法の開発には臨床試験が欠かせません。当院はJapan Breast Cancer Research Group(JBCRG)、Comprehensive Support Project for Oncologist Research of Breast Cancer(CSPOR-BC)をはじめ、岡山大学を中心としたNPO法人瀬戸内乳腺事業包括的支援機構(Setouchi Breast Project)への参加施設となっています。患者さんには臨床試験参加へのご協力をお願いすることがあります。参加は任意ですが将来の乳がん患者さんの治療法確立のため可能であればご協力をお願いします。

12.がんゲノム医療について

がん細胞の遺伝子変異を調べて変異に適合した分子標的薬を使用することにより従来より高い治療効果を目指す究極の個別化治療とされるがんゲノム医療が保険適応となりました。ただし現状ではまだ課題も多く、治療の恩恵を受けられる患者さんは決して多くはないのが現実です。また検査により、がんに罹患しやすい生まれ持った遺伝子変異が偶然判明することがあり、血縁者への影響が懸念されます。これらの問題に対処すべく診療科横断的に遺伝性腫瘍の患者さんに対応する窓口として遺伝性腫瘍外来を開設しました。

その他

治療に対する不安や悩みについては乳がん看護認定看護師やがん看護専門看護師、がん相談窓口などがサポートいたします。経済的なご相談については院内のソーシャルワーカーも対応致します。お気軽にご相談下さい。

(2020年1月 文責 高畠大典)

 

13.甲状腺外科外来について

(1)【甲状腺外科外来について】

当院は県内で唯一の日本内分泌外科学会(旧日本甲状腺外科学会)と日本甲状腺学会の認定施設です。当初は甲状腺外科(手術加療が中心)に特化した外来でしたが、現在では患者様の要望もあり内科治療も一部担当しています。近年外来患者様が増加傾向にあり、治療が落ち着いた方は近隣の医療機関をご紹介させて頂いております。外来待ち時間の減少に努めておりますので、ご理解下さいますよう宜しくお願いします。

(2)【診断について】

甲状腺・副甲状腺全般の診断ができるように、血液検査(FT3, FT4, TSH, TgAb, TPOAb, TRAb, TSAb, Tg, CEA, カルシトニン, i-PTH)、超音波検査、穿刺吸引細胞診(FNA)、針生検(CNB)、CT、MRI、PET-CT、Tc(テクネシウム)シンチ、I(ヨード)シンチ、Ga(ガリウム)シンチ、MIBI(ミビ)シンチ、静脈サンプリングなど一通りの検査が可能となっています。甲状腺腫瘍、バセドウ病、橋本病をはじめ、副甲状腺機能亢進症、甲状腺炎、遺伝性甲状腺疾患など広く扱っています。

(3)【手術について】

甲状腺の手術は主に甲状腺腫瘍(良性、悪性)、副甲状腺腫瘍、バセドウ病、橋本病が対象となります。術式については、腫瘤核出術、甲状腺部分切除術、甲状腺片葉切除術、甲状腺亜全摘術、甲状腺全摘術、副甲状腺摘出術、副甲状腺全摘術+前腕内自家移植など疾患に応じて選択しています。周囲臓器への浸潤や縦隔リンパ節転移などの進行甲状腺癌に対しても他臓器合併切除や胸骨切開なども併施し積極的に手術を行っています。

<良性手術適応>

(1)3〜4cm以上の大きな腫瘍、(2)増大傾向(急速な増大)、(3)圧迫またはその他の症状(嚥下困難、呼吸困難、嗄声など)、(4)美容的問題、(5)悪性が否定できない場合、(6)縦隔内進展、(7)機能性結節、(8)サイログロブリン(Tg)異常高値(1000ng/dl以上)。基本的には以上のような患者様を手術適応としています。

<バセドウ病手術適応>

(1)抗甲状腺薬の副作用、(2)手術以外の加療に対する治療抵抗性、(3)甲状腺の著明な腫大、(4)悪性腫瘍の合併、(5)早期の確実な寛解を期待する。以上のような患者様を手術適応としています。

<手術件数>

●甲状腺・副甲状腺手術件数

 

2014年

2015年

2016年

2017年

2018年

2019年

甲状腺

53例

61例

81例

98例

89例

92例

副甲状腺

8例

8例

9例

8例

2例

5例

 

●甲状腺癌手術件数

 

2014年

2015年

2016年

2017年

2018年

2019年

甲状腺癌

39例

36例

43例

58例

41例

42例

 

●バセドウ病手術件数

 

2014年

2015年

2016年

2017年

2018年

2019年

バセドウ病

3例

2例

3例

6例

5例

9例

(4)【微小乳頭癌について】

1cm以下の甲状腺乳頭癌を微小乳頭癌といいます。近年超音波機器が発達し、この微小乳頭癌の発見率が上昇傾向にあります。現在では、世界、日本のガイドラインでも微小乳頭癌に対する経過観察(active surveillance)が推奨されています。当院では微小乳頭癌の患者様に対しては経過観察と手術の両者のメリットとデメリットをお伝えした上で選択肢を提示し、患者様に選択して頂くようにしています。

(5)【術後放射性ヨウ素治療治療について】

甲状腺癌に対する全摘術後、再発のリスクが高い方、癌の遺残が疑われる方、明らかな遠隔転移を有する方には術後放射性ヨウ素治療(アイソトープ治療、RAI療法、I-131療法、内用療法)をお薦めしています。残念ながら当院では放射性ヨウ素治療を行うことができませんので、県内であれば高知大学附属病院をご紹介させて頂いております。ただし、人数制限により県内で施行できないこともありますので、その際には県外の放射性ヨウ素治療可能施設をご紹介させて頂きます。

(6)【化学療法について】

甲状腺癌に対する化学療法(抗癌剤)はあまり有効性のあるものがありません。唯一有効な治療として確立された甲状腺未分化癌に対するパクリタキセル療法(+放射線療法)は実施可能です。

(7)【分子標的薬について】

甲状腺癌の分野では分子標的薬が3剤保険収載されています。分化型甲状腺癌(乳頭癌や濾胞癌)全摘後で放射性ヨウ素治療抵抗性の局所進行または転移の患者様にはレンバチニブ(レンビマ)やソラフェニブ(ネクサバール)が使用可能です。切除不能の髄様癌にはレンバチニブ、ソラフェニブ、バンデタニブ(カプレルサ)が、切除不能の未分化癌にはレンバチニブが使用可能です。副作用が多く、頻回の外来受診が必要となりますが、当院では分子標的薬についても安全に処方が可能です。

(8)【副甲状腺疾患について】

甲状腺疾患以外にも原発性副甲状腺機能亢進症、続発性(二次性)副甲状腺機能亢進症の患者様に対して診療を行っています。前者については原因腺が見つからず持続性になっている患者様も含めて詳細な画像検査、手術を行っています。後者については内服や静注薬加療に抵抗性であったり、副作用で中止となった患者様に対して、PTxという副甲状腺全摘術+前腕内自家移植術を行っている県内唯一の施設です。

(9)【遺伝性甲状腺疾患について】

多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)(遺伝性髄様癌、原発性副甲状腺機能亢進症)、家族性大腸腺腫症(篩型乳頭癌)、Cowden病、Carney複合、甲状腺ホルモン不応症、ホルモン合成障害など、遺伝医療の対象となる甲状腺疾患は意外と多く存在します。「家族内に甲状腺の病気が沢山いて相談したい」、「遺伝病といわれて心配で詳しく内容を知りたい」、「遺伝学的検査をしてほしい」、「しっかり遺伝カウンセリングをしてもらいたい」など様々な希望にお応えしますのでお気軽に御相談下さい。

(10)【セカンドオピニオンについて】

セカンドオピニオンにも対応可能です。当院受診後に県内の施設や県外の甲状腺専門病院の受診を希望される患者様には、セカンドオピニオン目的の紹介状をお渡ししています。また、他院から当院でのセカンドオピニオンを希望される患者様も受け入れております。

(11)【術後出血について】

甲状腺手術術後に出血を来すことがまれにあります。頻度は約2%と報告されています。術後出血を予防するために、手術中に止血を十分確認して傷を閉じていますが、それでも出血することがあります。残念なことに全国的にも散発的にこの術後出血による死亡報告例があります。当院でも過去に呼吸停止例がありました。そのため現在当院では、術後出血の早期発見と迅速な処置に関するマニュアルを作成し、再発防止に取り組んでいます。



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