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整形外科
2020/10/02
担当医師
卒年 | 専門分野 | 資格など | ||
---|---|---|---|---|
部長 | 時岡 孝光 | 1985年 | 脊椎・脊髄疾患 | 日本整形外科学会専門医・指導医 日本脊椎脊髄病学会専門医・指導医 日本リハビリテーション学会専門医・指導医 |
救命救急センター外傷センター長(兼)科長 | 松本 俊之 | 1997年 | 外傷 | 日本整形外科学会専門医・指導医 |
医長 | 菊地 剛 | 2002年 | 脊椎・脊髄疾患 | 日本整形外科学会専門医・指導医 日本DMAT隊員 |
医長 | 山川 泰明 | 2007年 | 外傷、一般整形 | 日本整形外科学会専門医・指導医 日本救急医学会専門医 日本DMAT隊員 |
医長 | 小松原 将 | 2009年 | 腫瘍、脊椎・脊髄疾患 | 日本整形外科学会専門医 日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医 |
副医長 | 釜付 祐輔 | 2010年 | 関節(膝)、一般整形 | 日本整形外科学会専門医 日本スポーツ協会公認スポーツドクター |
副医長 | 山田 晋也 | 2011年 | 外傷、一般整形 | 日本整形外科学会専門医 |
副医長 | 内藤 健太 | 2013年 | 関節、一般整形 | 日本整形外科学会専門医 |
主査(専修医) | 佐藤 雄亮 | 2016年 | 一般整形 | |
非常勤 | 町田 崇博 | 2007年 | 関節、リウマチ、上肢 | 日本整形外科学会専門医・指導医 日本整形外科学会認定リウマチ医 日本整形外科学会認定スポーツ医 日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医 |

整形外科の特徴として、取り扱う領域が運動器であり、頚椎や腰椎といった体幹から指先・足先までの四肢にわたる実に広範囲であることが挙げられます。疾患としては先天性のものから加齢による変性疾患、骨軟部腫瘍、あるいは交通事故などの外傷性のものなど多岐に渡り、専門化、細分化の流れも他科以上に進んでいます。整形外科医師は全国的には内科、外科に次ぐ第3の人数であり、高知県内には200名近い整形外科医が勤務し、高知大学をはじめ県内には複数の優れた基幹病院がすでに存在しています。2005年に当センターを開設するにあたって、当科としては他院のコピーであってはならず、今まで高知県になかった特徴のある専門家集団による最先端医療チームを目指しました。救急救命センターにおける外傷治療、関節、骨軟部腫瘍、脊椎を4本柱として、手術・救急対応に全力をあげることを目標にしています。そのため原則として病診連携で紹介された患者さんのみを診察して外来診療を最小限にしており、県内の約200名の整形外科の先生方と役割を分担し、病診連携を推進させていただいております。外来リハビリ、関節内注射、ブロック注射などは地域の医療機関におまかせし、先天性股関節脱臼などの小児整形疾患は県立療育福祉センターに全面的にお願いしています。
次に、各分野での特徴を示します。
1.外傷(担当;松本、山川、山田、内藤)
外傷患者のうち約70%の割合で整形外科の関与する外傷が発生すると報告されています。当院の整形外科医は整形外傷治療に習熟しており、外傷の初期対応から手術、術後管理まで幅広く対応します。また最近の統計で日本において防ぎえた外傷死が40%と報告されています。その原因として外傷患者を集中して診療にあたる専門施設が少ないということが挙げられています。高知医療センターでは救命救急センター開設以来、3次救急対応施設として重症外傷患者を積極的に受け入れており、高知県における防ぎえた外傷死を少しでも少なくするため、外傷センター的役割を目指しております。また高知県全域より救急患者を受け入れるため、救急患者のヘリコプター搬送を積極的に行っておりますが、外傷患者においては整形外科外傷スタッフもヘリコプターに同乗し、現場からの治療に参加しております。多発外傷患者においても初療より積極的に診療に携わっており、さらに集中治療においても救急医と連携をとりながら治療にあたっております。また多発外傷患者の治療として骨折の早期内固定、ETC(early total care)やEAC(early appropriate care)が外傷後の合併症を減少させると言われており、当院では患者の状態改善を行った後に可能なかぎり早期内固定をめざし、髄内釘・プレートなどを常備し、緊急で手術が行える状態にしております。また不安定な骨盤骨折、関節内骨折である寛骨臼骨折も積極的に内固定を行っており、術後翌日より座位や離床訓練を開始し非常に良い結果を得ております。
時代はすでに超高齢社会に突入し、骨粗鬆症患者における骨折が非常に増加しております。骨粗鬆症性骨折の内固定は、その骨脆弱性のため強固な固定が困難ですが、近年それらを解決するために新しい固定システムが多数開発されております。当院では積極的に新しい固定システムを採用し、安全・安心に最先端の治療が行えるように努めています。また患者さまの早期社会復帰をめざし、できる限り早期手術、早期リハビリテーションを行うよう心がけております。
平成30年度には441件の骨折・外傷関連の手術を行いました。重度外傷、変形治癒など治療が困難または難渋している患者がおられましたら、是非当院にご紹介くださればと思います。また術後の状態が安定された患者を逆紹介させていただくことも多く、大変御迷惑おかけしておりますが今後とも宜しくお願いします。
2.関節外科(担当;町田、釜付、内藤)
1)関節鏡視下手術
当院では、主に膝関節に対して鏡視下手術を行っています。以前はスポーツ選手にのみ行われていた前十字靭帯断裂に対しても、現在では関節軟骨・半月板の二次的損傷や変形性膝関節症への進行を予防するために靭帯再建を行うことが一般的となっており、当院でも積極的に鏡視下前十字靭帯再建術を行っています。また、半月板に関しては、若年者を中心としたスポーツ活動を基盤とする半月板損傷や中高年に好発する半月板変性断裂、特に内側半月板後根断裂に対して手術適応があれば積極的に半月板修復術を行っています。その他にも、生まれつき半月板が大きい円板状外側半月板やタナ障害(内側滑膜ひだ)などによる膝のひっかかりを認める場合も、鏡視下手術の適応となることがあります。
内側半月板後根断裂(medial meniscus posterior root tear, MMPRT)は、50〜60歳代の中高年女性に好発し、急激に膝関節機能が悪化する特殊な半月板の断裂です。階段の利用、ハイキング、犬の散歩、段差や溝を飛び越える際の着地など軽微な外傷を受傷機転とするMMPRTは、プチッという音とともに突然膝の裏側に痛みが生じることが多いです(無自覚の場合もあり)。レントゲンのみでは診断ができないため、MRI検査が必須で特徴的なMRI画像所見を見極める必要があります。実際には見逃されることが多く、疑われる場合はすみやかに専門医への受診が必要です。受傷後数日は激痛で歩行困難となっても安静により1週間程度で痛みが軽快しますが、放置すると次第に痛みが再燃し膝の腫脹や夜間の膝痛で困るようになります。その時点で整形外科を受診するケースがありますが、中には膝関節骨壊死(脆弱性骨折)の発症や変形性膝関節症の進行をすでに認めるため、数ヶ月〜数年以内に人工膝関節手術を余儀なくされる場合があるため注意が必要です。
その他、スポーツ障害・外傷でお困りの方がおられましたら、お気軽にご相談ください。
2)人工関節置換術
当科では主に、股関節や膝関節疾患に対する人工関節置換術を行っています。
人工股関節置換術は変形性関節症や特発性骨頭壊死の末期、関節リウマチなどで関節軟骨が消失したものが適応となります。股関節を人工物に置き換えるため、確実な除痛効果が得られ、関節可動域は改善し、歩きやすくなります。QOL(日常生活の質)を高める治療効果の高い手術です。
人工股関節(THA)はポリエチレンのライナーと金属またはセラミックの骨頭という組み合わせを使うことが多く、このセラミックの骨頭を使ったことで、人工股関節の耐用年数が向上しています。また、平成22年秋よりコンピューター支援ナビゲーション手術を導入し、人工関節の正確な設置が可能となり、術後脱臼リスクの軽減や可動域の改善などが期待でき、早期離床が可能となったことによる術後深部静脈血栓リスクの減少などに寄与しています。

THA術後レントゲン写真
人工膝関節置換術は、変形性膝関節症や関節リウマチなどにより変形した関節を、金属やセラミック、ポリエチレンなどでできた人工膝関節で入れ替えることで痛みがなくなり、歩行能力がかなり改善されます。
関節すべてを置換する全置換術(TKA)と片側置換(UKA)の2種類の手術方法があります。当科では関節の破壊が一側のコンパートメントに限局する症例にはUKAを選択し、皮膚切開が10cm程度のMISで施行していますが。関節の破壊が著明な場合にはTKAの適応となります。手術後の膝の屈曲角度は術前の状態に大きく影響されます。また、膝関節置換術においてもナビゲーション手術を行っていますが、令和元年秋からは、最新のナビゲーションシステムの導入を予定しており、さらなる成績向上が期待されます。


TKA(右)とUKA(左)の術後レントゲン写真
3)骨切り(こつきり)手術
膝の骨切り手術は、人工膝関節置換術と同じように、変形性膝関節症などに対する治療として行われる手術です。最も一般的に行われている骨切り術は、高位脛骨骨切り術(HTO)です。
膝にかかる負荷は、多くの場合主に膝の内側にかかります。こういったO脚変形を矯正するように骨切り手術を行うと、負荷がひざの外側を中心にかかるようになります。変形性膝関節症の患者さんの多くは膝の内側から軟骨が障害されるため、膝の外側の軟骨があまり痛んでいない患者さんの場合は、人工膝関節置換術を行わなくても骨切り手術での改善が期待出来ます。骨を切って矯正した後には金属プレートとスクリューで固定します。骨切り手術の最大のメリットは、患者さん自身の関節が温存されることです(骨や軟骨、半月板が保持されます)。
近年、内固定材料の進歩や新しい脛骨近位骨切り術などの開発のお陰で、患者さん一人一人の膝の状態や生活背景に合わせた治療ができる様になってきています。患者さんの膝がHTOに適しているときは大変有効な治療法です。そのような患者さんで手術を希望される患者さんには、人工膝関節置換術と両方の説明を行い、患者さんといっしょに治療方法を決めています。

HTO術後レントゲン写真
4)関節リウマチの治療
当院では整形外科でも関節リウマチ患者さんの診療を行っています。近年の抗リウマチ薬の開発などにより、リウマチ治療の状況が大きく変わり、リウマチ治療の原則は抗リウマチ薬による疾患活動性のコントロールとなっています。特に生物学的製剤の効果は驚くべきものであり、現在8種類の生物学的製剤(レミケード、ヒュミラ、シンポニー、シムジア、エンブレル、アクテムラ、ケブザラ、オレンシア)が保険診療で使用可能となっています。生物学的製剤は注射での投与となりますが、JAK阻害剤という経口分子標的治療薬も登場しており、患者さんのニーズに応じた形での治療も範囲が広がってきています。
抗リウマチ薬の発達に伴い、関節リウマチに対する関節外科手術は減少しているとも言われていますが、患者さんの疾患活動性のコントロールの改善に伴い、様々なニーズは拡大しており、QOLに直結する様な指や足趾などに対する小関節手術はむしろ増加傾向とも言われており、外科的な介入を必要とする関節リウマチ患者は少なくありません。
手術というと、患者さんも抵抗があると思いますが、まずは薬物治療の変更や装具治療、注射などの保存的治療が優先して選択され、それに対する反応、必要性や希望に応じて手術治療について考慮する場合が大多数ですので、関節リウマチにおける関節症状について、気軽にご相談頂ければと思います。
3.骨・軟部腫瘍(担当:小松原)
整形外科では、骨・軟部腫瘍も取り扱っています。一般的に整形外科で腫瘍というイメージがないと思いますが、骨や軟部(筋肉・脂肪など)にも腫瘍ができることがあります。骨・軟部腫瘍は亜型も含めると100種類以上存在し、腫瘍と紛らわしい疾患も数多くあるため、診断・治療には専門的な知識が必要です。
骨・軟部腫瘍には良性のものと悪性のもの、その中間の性質を持つものがあります。悪性のものは肉腫と呼ばれます。肉腫はきわめて稀な疾患ですが、いわゆる「がん」の一つで、他の臓器などに転移(血流やリンパなどにのって離れた部位に病巣を形成すること)する性質があります。そのため、生命に関わる病気です。
骨腫瘍
骨腫瘍は、痛み・しこりなどの症状が出て見つかる場合もありますが、多くはけがなどでレントゲンを撮像した際に偶然発見されることが多いです。骨腫瘍には骨腫瘍類似疾患、良性骨腫瘍、原発性悪性骨腫瘍、転移性骨腫瘍があります。疲労骨折、骨髄炎などは画像検査で骨腫瘍と疑われることがあります。
骨腫瘍の種類
骨腫瘍類似疾患 真の腫瘍ではないが、レントゲン上、骨腫瘍のように見える疾患
例: 単純性骨嚢腫、非骨化性線維腫など
良性骨腫瘍
例: 内軟骨腫、骨軟骨腫、類骨骨種など
原発性悪性骨腫瘍 (骨にできる肉腫)
例: 骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫など
転移性骨腫瘍
他の臓器に発生した癌(肺癌、胃癌、大腸癌など)が、血行性に骨に病巣を形成したもの。
骨腫瘍の診断
骨腫瘍の診断にはレントゲンが重要です。レントゲンで診断がはっきりしない場合にはCT・MRIなどを追加します。悪性が疑われるものでは生検を行って診断を確認します。
骨腫瘍の治療
骨腫瘍類似疾患では、骨折しやすいかどうかで治療適応を判断します。骨嚢腫などで骨の強度が低下して骨折を起こしそうな場合や痛みがある場合には手術を考慮します。骨折のリスクがあまりないまたは低い場合にはレントゲンで経過をみるだけで治療は必要ないことが多いです。
良性骨腫瘍の治療は腫瘍の種類により対応が異なります。頻度の多い内軟骨腫や骨軟骨腫(外骨腫)では、疼痛がなければ特に治療は行わず経過観察のみとします。一方で類骨骨腫のように疼痛を伴う腫瘍では手術を行います。
悪性骨腫瘍、特に骨肉腫・ユーイング肉腫では化学療法(抗がん剤治療)を早急に開始する必要があります。そのため、画像検査〜生検を迅速に行って診断を早期につけます。治療は化学療法、手術、ユーイング肉腫ではこれに加えて放射線治療を組み合わせた集学的治療プロトコールで行います。骨肉腫・ユーイング肉腫は小児に多いため、少子高齢化、過疎化に伴い、当院では年間1〜2例程度となっています。
軟部腫瘍
軟部腫瘍の定義:
軟部腫瘍は軟部組織から発生する腫瘍の総称である。全身のあらゆる部位に発生し、皮下・筋間などの線維性結合組織、腱や靭帯などの線維組織、脂肪組織、横紋筋組織、平滑筋組織、血管およびリンパ管組織、滑膜組織などの中胚葉由来の組織と、末梢神経組織などの外胚葉由来の組織が発生母地となる。
(軟部腫瘍診療ガイドライン2012)
→内臓と皮膚・骨をのぞいた体にできる腫瘍のことを言います。全身どこにでもでき、腫瘤(しこり、こぶ)として触れます。良性のものと悪性のもの(肉腫といいます)、その中間のものがあります。頻度としては良性のものが圧倒的に多く、米国の統計では良性100に対して悪性1の頻度とされています。良性腫瘍の多く(脂肪腫・血管腫など)は放置してもよい腫瘍ですが、悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)は放置すると命取りになる疾患です。
軟部腫瘍は、一部を除いて疼痛などの自覚症状がでることは少ないため多くの方が腫瘤(しこり・こぶ)に気づいて病院・診療所を受診します。
しこり・こぶの診断はどうする?
・問診・視診・触診
いつごろからあるのか?大きくなっているのか?痛みはあるのか?しびれは?発熱はあるのか?
皮膚の色調変化、しこりの大きさなど
皮膚としこりの間は動くか?しこりと奥の組織(筋肉・骨など)との間は動くか?しこりの硬さ・圧痛・放散痛など
腫瘍の性状によりある程度特徴があり、これらの情報は画像検査と併せて診断制度を高めるのに役立ちます。
(例)
数年前からあり、ほとんど大きさが変わらない。柔らかい腫瘤 → 脂肪腫?
子供のころからある、運動したら腫れて痛くなる。柔らかい腫瘤。 → 血管腫?
打撲後に急激にしこりが出現して痛みがでた。 → 血腫?
両側の肩甲骨の下にあって固い腫瘤 → 弾性線維腫?
数か月前にしこりに気づいた。月単位で大きくなっている。サイズが5cm以上の硬い腫瘤 → 悪性軟部腫瘍?
・疼痛は悪性腫瘍のサイン?
軟部腫瘍のほとんどは悪性を含めて疼痛を伴わないことが多いです。疼痛は一部の腫瘍には特徴的で、悪性腫瘍では神経に浸潤したものなどでは疼痛が出ることがあります。
・サイズの大きいものは腫瘍?
脂肪腫・血管腫を除くと良性腫瘍は5cm未満のものがほとんどとされます。
→ 5cm以上のものは悪性軟部腫瘍の可能性が高いといえます。例外は脂肪腫や血管腫、後腹膜に発生した神経鞘腫など限られます。悪性を念頭に検査・治療を行うことが必要です。
一方で全国骨・軟部腫瘍登録では、悪性軟部腫瘍の1/4は5cm未満で診断されています。5cm未満でも悪性軟部腫瘍の可能性はあるので注意が必要です。
・画像検査
レントゲン
多くの場合、診断的価値は低いが下記のような一部の腫瘍では診断の補助になる。
脂肪腫では腫瘍部の透過性の亢進(黒くみえる)がみられる
血管腫では、静脈石といわれる円形の石灰化が認められる。
滑膜性骨軟骨腫症では、関節内の石灰化病変として描出される。
CT
レントゲンよりも正確に腫瘍の石灰化や脂肪腫の透過性亢進が診断できる。
MRIに比べて診断的価値は低い。
悪性の場合は遠隔転移の診断に用いられる。
MRI
軟部腫瘍診断の一番のキーとなる検査で欠かせない検査。造影剤を使用することでより診断的価値が高まります。
MRIで診断できる軟部腫瘍・しこりとしては、ガングリオン・滑液包炎・粉瘤(アテローマ)・血腫・膿瘍・神経鞘腫・血管腫などがあります。
造影していない場合、悪性腫瘍を良性腫瘍と間違える場合も多いため、注意が必要です。
核医学検査 タリウムシンチ
悪性か良性かの判断に用いる。悪性の場合、治療効果判定にも用いられる。
PET
悪性か良性かの判断に用いる。悪性の場合、遠隔転移の検索や治療効果判定に用いる。保険適用上は、悪性と確定していることが条件となっています。そのため、用途は限られます。
以上のような画像検査を行っても、確定診断に至るのは上述したごく一部の種類に限られます。そのほかのものでは、診断確定のためには生検が必要となります。
・生検(腫瘍組織の一部を採取して病理組織検査を行う材料を採取すること)
針生検・切開生検・切除生検があります。
針生検 局所麻酔でエコー・CTなどで病変の位置を確認して専用の生検針で病変を採取します。採取できる病変のサイズが小さく、診断が困難なこともあります。
切開生検 手術で切開して腫瘍の一部を採取します。より多くの組織が採取できるため、針生検より確実に診断をつけることができます。
切除生検 手術で病変全体を切除して病理検査に提出します。良性病変が考えられるごく小さい病変の場合のみ行う方法です。切除後に悪性の診断が出た場合に
生検には腫瘍組織を採取して確実に診断をつけることと、診断後の治療計画に悪影響を及ぼさない方法で行う必要があります。そのため、生検から専門的な医療機関で行うことが勧められます。
生検で得られた腫瘍組織の病理組織診断は骨・軟部腫瘍を専門的に診ている病理医以外では診断が困難なものも多く、良性・悪性の区別も間違うことが多いです。当院では骨・軟部腫瘍の病理診断に長けた病理医が診断しています。
・治療法は
軟部腫瘍の治療は、基本的に外科的治療が主体となります。
ガングリオンなどの腫瘍以外の疾患および脂肪腫などの大きくなるのが非常にゆっくりした良性腫瘍では症状が特になければ経過をみることが可能です。切除する場合、良性のものでは、できるだけ機能障害がでないように切除を計画します。
悪性腫瘍(軟部肉腫)では切除可能なものでは、早期に手術が必要です。手術に際しては、腫瘍だけを切除する方法(辺縁切除)では再発する可能性が高いため、周囲の正常組織でくるむように切除する広範切除術が適応となります。そのため、切除後には欠損・機能損失がおきるので、形成外科と連携して欠損部の補填・機能再建が必要です。
軟部肉腫の一部では、抗がん剤治療や放射線治療が適用となることがあります。特に小児に多く発生する横紋筋肉腫では抗がん剤・放射線・手術を組み合わせて治療を計画します。
4.脊椎(担当:時岡、菊地、小松原)
当院での脊椎治療の特徴的なこととしては
1.脊髄損傷に対応します
救急救命センターの使命の一つとして、脊髄損傷の受け入れに力を入れています。交通事故や労災事故などで脊椎を骨折され、四肢麻痺となった患者さんの治療は集学的治療が必要です。緊急手術による脱臼骨折の整復、固定術が必要なことは当然ながら、人工呼吸、血圧管理などICUでの集中治療が欠かせません。脊髄損傷の患者さんを搬送するのにはヘリコプターがもっとも振動がなく、最速です。救急車では振動が強く、激痛を生じます。連絡を受け次第、緊急手術の準備し、ヘリポートからICU、手術室へと即座に行けます。最近では脊髄損傷を専門とする医師が減少し、全体像を捕らえての治療ができる施設が四国には無いのが現状です。
2.ナビゲーション支援手術をおこなっております
当院で行っているナビゲーション支援手術は手術中にCTを撮影して,CT画像を参考にしながら手術をおこなっているものです。正確なインプラント設置が可能になり、手術の安全性向上に貢献しています。また当院では(1)とも重複しますが、頚椎固定術は低侵襲な術式を考案し実践しております(Minimally Invasive Cervical Screw: MICEPS)。MICEPSもナビゲーション支援手術にて行っております。頚椎症性脊髄症は縦割式の椎弓形成を基本としておりますが、脊椎の配列(アライメント)が不良な場合など低侵襲な固定(MICEPS)を追加したり、頚椎後縦靭帯骨化症(OPLL)にも低侵襲に固定術を追加することが可能となっております。
3.コンドリアーゼ椎間注入 低侵襲な治療を行っております
腰椎椎間板ヘルニアに対する新たな治療法であるコンドリアーゼ注入を行っております。へルニアを起こしている椎間板の髄核に注射します。髄核は保水成分が豊かで、ヘルニコア(コンドリアーゼ)が髄核内の水分を奪いヘルニアが縮小させます。結果として神経の圧迫が軽減、痛みや痺れなどが軽減すると考えられています。対象になる患者様は保存療法で十分な改善が得られない後縦靭帯下脱出型の腰椎椎間板ヘルニアで1泊2日の入院で行っております。
4.Virtual realityなどの最新技術も使用しております
新たな技術であるVirtual realityの応用にも取り組んでいます。今後さらに普及する技術であり、手術・教育・リハビリテーションなどの領域で応用が期待されています。現在のところ手術前のCT画像などを離床した手術のシミュレーションを行ったり、若手医師の教育などに利用しております。
5.リハビリ
当院では脊髄損傷やその他の脊椎変性疾患によって高度な麻痺をきたしている患者様の機能改善に向けて、ロボットスーツHAL®︎自立支援用下肢タイプを使用したニューロリハビリテーションを行っております。ご自分で立位や歩行ができない時期であってもHAL®︎を着用することによって、長期間ベッドに寝ているためにおこる合併症を予防し、機能改善を促すことが期待されます。急性期病院でHAL®︎を導入している病院は日本では多くありません。しかし、麻痺がある患者様の回復のためには脳から脊髄を通じて筋へと至る神経系を駆使した随意運動に早期から取り組む必要があり、そのために我々はHAL®︎を使用したプログラムを行っております。

HALを使用しての歩行練習
6.おわりに
当センター整形外科の特色である、外傷、関節、骨軟部腫瘍、脊椎について、述べさせていただきました。当科は何でも屋ではなく、特殊性のある医療を地域に提供するのが使命と考えています。緊急例では救急救命センターを積極的に利用していただき、また、地域の先生方との病診連携を通して我々を活用していただければ幸いです。
手術件数
年度 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | |
---|---|---|---|---|---|
外傷 | 上肢 | 99 | 107 | 131 |
128 |
下肢 | 216 | 208 | 233 |
206 |
|
骨盤 | 17 | 27 | 20 |
19 |
|
抜釘・その他 | 119 | 117 | 57 |
77 |
|
関節 | TKA | 22 | 29 | 20 |
35 |
THA | 31 | 39 | 31 |
37 |
|
鏡視そのほか | 43 | 23 | 22 |
44 |
|
脊椎・脊髄 | 頸椎 | 141 | 147 | 152 |
132 |
胸椎 | 49 | 52 | 54 |
42 |
|
腰椎 | 206 | 190 | 193 |
219 |
|
脊椎・脊髄腫瘍 | 9 | 10 | 10 |
4 |
|
そのほか | 5 | 54 |
49 |
||
腫瘍 | 生検 | 7 | 3 | 3 |
7 |
骨腫瘍(良性) | 12 | 8 | 3 |
12 |
|
骨腫瘍(悪性) | 0 | 5 | 6 |
3 |
|
軟部腫瘍(良性) | 24 | 20 | 26 |
30 |
|
軟部腫瘍(悪性) | 2 | 4 | 2 |
11 |
|
手 | 手根管症候群 | 1 | 1 | 2 |
10 |
ばね指 | 0 | 0 | 2 |
1 |
|
腱 | 7 | 7 | 8 |
11 |
|
そのほか | 5 | 7 | 2 |
4 |
|
足 | 7 | 4 | 1 |
7 |
|
切断 | 上肢 | 2 | 0 | 1 |
0 |
下肢 | 18 | 12 | 5 |
6 |
|
感染 | 切開、掻把 | 8 | 2 | 1 |
7 |
そのほか | 1 | 2 |
51 |
||
総数 | 1050 | 1077 | 1024 |
1152 |
受賞歴
-
第43回中国四国整形外科学会(2010年) 奨励賞
ナビゲーションシステムを利用した上位頸椎後方固定術の成績と問題点
高知医療センター整形外科 土井英之、時岡孝光 -
第21回日本脊椎インストウルメンテーション学会2012年優秀ポスター賞
椎弓根スクリュー挿入の安全な経路としての頚椎後外側アプローチ
高知医療センター整形外科 土井英之、時岡孝光 -
第19回JPSTSS学会2013年 ベストペーパー賞:
新たな後外側アプローチを用いた頚椎椎弓根スクリュー固定の小侵襲化
高知医療センター整形外科 土井英之、時岡孝光 -
2013年日本リハビリテーション学会中国四国地方会 優秀発表賞
高知県における外傷性脊髄損傷の疫学調査
高知医療センター整形外科 時岡孝光 -
2015年Okayama Spine Group最優秀論文賞
時岡 孝光, 最小侵襲上位頸椎後方固定術 後外側進入による新たな環椎外側塊スクリュー挿入方法 Journal of Spine Research 6巻7号,1108-1113, 2015. -
第41回 日本骨折治療学会 学会賞 (2015年)
大腿骨転子部骨折における回旋不安定性の評価
−CT再構築画像を用いた回旋角度・回旋方向の検討−
高知医療センター整形外科 田村 竜 -
2015年11月高知整形外科集談会 奨励賞
外傷性心肺停止と頚椎損傷の関与 ―Autopsy imagingでの検討―
高知医療センター整形外科 多田圭太郎 -
2016年Okayama Spine Group最優秀論文賞
Komatsubara T; Tokioka T; Sugimoto Y: Minimally invasive cervical pedicle screw fixation by a posterolateral approach for acute cervical injury. Clinical spine surgery 30(10).466-469,2017. -
第46回日本脊椎脊髄病学会学術集会English Presentation Award(2017年)
Minimally invasive stabilization of spines via a new posterolateral approach for upper cervical spinal injuries
T. Tokioka, K. Tada -
第9回日本MISt研究会 Best Presentation Award(2018年)
仰臥位で行う逆行性最小侵襲頚椎椎弓根スクリュー固定術(Reverse MICEPS)
高知医療センター整形外科 時岡孝光 -
第5回四国脊椎研究会 優秀発表賞 (2019年)
コンドリアーゼ椎間板内注入6か月後でみられる画像変化
高知医療センター整形外科 田所佑都 小田孔明、時岡孝光 -
第26回日本脊椎・脊髄神経手術手技学会 優秀発表賞
椎体前面から挿入する頸椎椎弓根スクリューの至適挿入点の画像検討
高知医療センター整形外科 小田孔明、時岡孝光 -
4th International MIST Congress Best Presentation Award (2019年)
Minimally Invasive Cervical Pedicle Screw Fixation(MICEPS) via a Posterolateral Approach – Introduction of a whole new world, a new fantastic point of view –
T.Tokioka, Y.Oda

当院整形外科はJOANR(日本整形外科学会症例レジストリー)に参加しています。
当院整形外科はJOANR(日本整形外科学会症例レジストリー)に参加しており、手術を受けられた患者様の手術に関するデータをレジストリーに登録しております。
登録データの削除を希望される方につきましては担当医まで申し出ください。
JOANRホームページ
2015年3月〜2019年3月まで当院を主管施設として行われておりました臨床研究「大腿骨転子部骨折における回旋不安定性の評価」の結果報告書ができました。

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