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医療事故の包括的公表(H.29.4.1~H29.9.30)及び個別公表について

2017/12/27

高知県・高知市病院企業団立高知医療センター医療事故の包括的公表について

 高知県・高知市病院企業団立高知医療センター医療事故公表基準(平成19年1月1日制定)に基づき、平成29年4月1日から平成29年9月30日までの間に高知医療センターで発生した医療事故について、次のとおり包括して公表します。

 なお、医療事故の定義は、公表基準において次のとおり定めています。
 医療事故とは、過失の有無を問わず、医療にかかわる場所で医療の全過程において発生した全ての人身事故をいいます。医療事故には、患者さんだけでなく、職員が被害者の場合もあります。また、患者さんには実施されたが、結果として患者さんに被害がなく、その後の観察も不要であった場合も含まれます。

 医療事故に係る事例は、医療安全対策を進める上で貴重なデータであるとともに、再発防止に向けての第一歩であることから、職員には積極的に報告するよう指導しています。

 医療事故の再発防止に向けて、医療安全管理センターでは、職員から報告された全ての事例について分類・分析するとともに、医療安全管理委員会による事例の評価と再発防止策の検討を経て、対応策等を職員に周知しています。

 また、毎月1回の全職員を対象とした医療安全管理委員会主催の医療安全についての研修会や、入院フロアにおける医師・看護師等によるカンファレンスの開催など、職員間の情報の共有と安全対策に取り組んでいます。

(1) レベル別医療事故の件数 (平成29年4月1日~平成29年9月30日)

(2) 概要及び改善策

※構成比は端数計算の関係上、合計が100%とはなりません。

医療事故の個別公表

車いすへ移乗介助時に下腿皮膚損傷

<概要>

1.患者

90代 女性

2.経過
  1. 患者は脳梗塞で左片麻痺、膝の屈曲困難があり移動に全介助が必要であった。
  2. 朝食摂取のため看護師2名で車いすへ移乗介助中、左下腿外側を車いすの金属部分に接触させてしまい、9.8×2.3cmの裂創を来した。
  3. 患者は超高齢のため皮膚が脆弱で、縫合に難渋し傷全体の縫合は困難であった。
  4. 翌日に、回復期リハビリ病院への転院を予定していたが延期となった。
  5. 形成外科処置を行いながら、当院でのリハビリを継続した。
  6. 傷口は感染することなく縮小し、処置は洗浄と軟膏ガーゼ塗布となり転院した。


3.原因
  1. 移動の際に、患者の下肢の位置、車いすの位置、周囲の観察が不十分であった。
  2. 左片麻痺があり、膝の屈曲も困難な身体状況の患者を移動させる時の注意不足。
  3. 患者は超高齢で皮膚が脆弱、損傷を来しやすい状況であったが、皮膚保護ができていなかった。
  4. 車いすは、使い方により金属部分が突出する構造になっていたが、介助時に気付けなかった。


4.医療事故の程度

 レベル3b 傷の処置のために入院日数が延長となった

5.再発防止策
  1. 理学療法士の協力を得て、移乗介助のレクチャーを部署で実施した。
  2. 皮膚損傷リスクが高い患者は、レッグウォーマーやソックス、下巻き材などで皮膚を保護する。
  3. 車いすの改善をメーカーに相談した。


6.現在の状況

 地元の医療機関に転院。

マーキング針の体内遺残

<概要>

1.患者

80代 男性

2.経過
  1. 骨盤骨折の手術で、恥骨結合部に23G注射針をマーキングとして留置していた。
  2. 術野に注射針が出された時に、ホワイトボードに記録されなかった。
  3. 閉創前のタイムアウトで、注射針が回収できていないことに気づけなかった。
  4. 体内に注射針が残ったまま手術を終了した。
  5. 手術室看護師が片付けをしていた時、注射針がないことに気づき医師に報告した。
  6. 医師が、退室前のレントゲン写真を確認すると注射針が写っていた。
  7. 直ちに家族に説明し同意を得た上で、再度、手術室に搬入し注射針を摘出した。


3.原因
  1. 体内にガーゼや針などを入れる際には、スタッフ間で情報共有し、ホワイトボードに記録し閉創前のタイムアウトで確認している。今回、23G注射針を入れたことが外回り看護師に伝えられておらず、記録がされなかった。
  2. 退室前に撮影したレントゲン写真に針が写っていたが、医師は患部の固定の状態に注意が向き、23G針が残っていることに気付けなかった。
  3. 骨盤骨折の手術は外傷の手術の中でも最も難しい手術であり、手術時間も長時間であったため、疲労により注意不足、確認不足となってしまった。


4.医療事故の程度

 レベル 3b 濃厚な処置や治療を要した(手術) 

5.再発防止策
  1. 体内に留置した物は声に出し、スタッフ全員で情報共有し、留置した物と数をホワイトボードに記録する。
  2. 閉創前のタイムアウトで、ホワイトボードの記録を基に、必ず全員で確認することを徹底する。
  3. 恥骨結合のマーキングには、小さい注射針は使用せず、太いワイヤーを使用する。
  4. 退室前のレントゲンチェック時に、異物の有無にも注意して複数名で確認する。
  5. レントゲンチェックでは、放射線技師など多職種でも気づいたことを言葉で伝え確認する。


6.現在の状況

 地元の医療機関でリハビリを継続中で、月1回程度の当センター整形外科の外来通院。

高知県・高知市病院企業団立高知医療センター医療事故公表基準

1 目的

 高知医療センターで発生した医療事故の内容や原因、改善策等を自ら公表することにより、病院運営及び医療の透明性を高め、県民・市民からの医療に対する信頼と医療の安全管理に資することを目的とする。

2 用語の定義

 「医療事故」とは、過失の有無を問わず、医療に関わる場所で医療の全過程において発生した全ての人身事故をいう。医療事故には、患者さんだけでなく、職員が被害者の場合もある。
 また、患者さんには実施されたが、結果として患者さんに被害がなく、また、その後の観察も不要であった場合を含む。
 「医療過誤」とは、医療の過程において医療従事者が当然払うべき業務上の注意義務を怠るなど、明らかに誤った医療行為又は管理上の過失に起因して発生した医療事故をいう。

3 医療事故等の患者さんへの影響レベル

 医療事故の発生により生じた影響の大きさに応じて、そのレベルを次の表のとおり設定する。

4 公表する医療事故の基準

 次のいずれかに該当する医療事故が発生した場合、これを公表する。

  1. 全ての事例について、包括的に公表する。
  2. 前号の事例のうち、医療過誤又は過失の疑いのある医療事故により、患者さんが死亡した事例、傷害の程度が高度である事例及び傷害の程度は中等度で傷害の継続性が永続的な事例については、個別に公表する。
  3. 前号に掲げる事例のほか、社会的影響を考慮の上、病院長が必要と認める事例については、個別に公表する。

5 公表の内容

 公表する内容は、原則として次の項目とする。

(1) 包括的公表
  • ア 事故の件数
  • イ 代表的な事例の概要
  • ウ 改善策
  • エ その他、必要と思われる事項
(2) 個別公表
  • ア 事故の概要(事故発生日時、場所、状況、原因)
  • イ 当該関係者の情報
  • ウ 今後の対策と改善策
  • エ その他、必要と思われる事項

6 公表の手順

 公表に際しては、病院長が事前に公表事項等について企業長と協議し、次により行う。

  1. 公表は、1年を上半期と下半期に分け、半期ごとに公表する。
  2. 前号の公表は、直近の企業団議会で行うとともに、ホームページ上に掲載する。
  3. 前2号の規定にかかわらず、社会的影響を考慮し、病院長が必要と認める事例については、直ちに公表する。

7 患者さん及びご家族等への配慮

  1. 個別公表に当たっては、事前に患者さん及びご家族等に十分説明を行い、同意を得ることを原則とするが、同意が得られない場合等においても、自治体病院としての社会的な説明責任を果たすために必要な範囲で公表する。
  2. 公表する内容は、患者さんやご家族が特定されることのないよう、個人情報の保護に最大限の配慮を行う。

附則
この基準は、平成19年1月1日から適用する。

附則
この基準は、平成24年2月26日から適用する。

附則
この基準は、平成27年5月27日から適用する。