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医療事故の個別公表(R3.12.24)について
2021/12/24
医療事故の個別公表
非吸収糸を使用し再手術を行った事例
1.患者
30代 女性
2.概要
緊急帝王切開術術中弛緩出血を来たした。子宮体部の止血(圧迫縫合)を行う際、吸収糸を使用するべきところ、非吸収糸を使用した。翌日、執刀医が診療科長に報告した際、非吸収糸を使用したことが発覚した。同日、非吸収糸の除去術を行なった。
(*吸収糸:一定時間経過後に水に溶けて身体に吸収される糸)
3.状況と原因
時間外の緊急帝王切開中に子宮から大量出血があった。胎児・胎盤娩出後の子宮体部収縮不全による弛緩出血であり、執刀医は、まず通常の止血処置である子宮収縮剤投与や子宮マッサージで止血を試みた。しかし、この症例では止血が得られず、稀なことではあるが緊急対応として身体に吸収される「吸収糸」を使用した子宮体部の圧迫縫合による止血法が必要であると判断した。執刀医は、「子宮圧迫縫合に使う直針(真っ直ぐな針)付きの糸」をとってくるよう看護師に指示した。時間外の緊急手術であったため、看護師は産科担当者ではなく、「直針付きの糸」という指示を聞き、外科で腸管縫合の際、一時的に使用する「非吸収糸」を持ってきた。
執刀医は緊急対応として直針の糸で圧迫縫合を行うことは理解していたが、実際に、その針を使用するのは初めてだった。また、通常、帝王切開で使用する糸は全て「吸収糸」なので、「非吸収糸」が準備されるとは想定しておらず、この縫合糸の存在も知らなかった。更に「吸収糸」と「非吸収糸」は見た目で区別できるものではないので、提供された糸を疑うこともなく、そのまま使用した。
一方、看護師は産科用の「吸収糸」の「直針付きの糸」の存在を知らなかった。外科担当経験のある看護師であるため、「直針付きの糸」と指示されれば、この糸だと判断していた。
4.再発防止策
- 子宮圧迫縫合用糸針の周知をする。
・医師と看護師は、手術室で使用する2種類の直針を見て、触って違いを知る。
・緊急帝王切開の材料に組み込み、前置胎盤、弛緩出血の止血に使用する吸収糸である事を周知する。 - 産婦人科カート内の周知をする。
・産科医師は、産婦人科カート内を十分確認し、どの物品が常備されているか診療材料を把握する。
・看護師は、カート内の当該の糸針の配置場所を確認する。
・カート内の配置した場所には名称と用途を明示する。 - 弛緩出血時の対応について周知する。
・産科出血の勉強会を行い、弛緩出血時の病態を理解し、子宮縫縮の目的や手技、必要物品の理解を深める。
・帝王切開術の手術看護マニュアルに弛緩出血時の対応について掲載する。必要物品は写真付きで記載する。 - 疑問に思った事は、解決するまで確認を繰り返す。
5.現在の状況策
一ヶ月検診で問題のないことを確認。その後も特に異常は確認されていない。