- HOME
- 病院紹介
- 医療の質・安全の向上を目指して
- 医療事故データ
- 医療事故の個別公表(R5.12.7)について
医療事故の個別公表(R5.12.7)について
2023/12/7
医療事故の個別公表
検査抜かりに伴いB型肝炎ウイルス再活性化の発見が遅延した事例
~患者影響度レベル:3b(入院を要した)事例~
1.患者
80代 男性
2.概要
びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫に対して抗がん剤(リツキシマブ)治療を行い完全寛解*¹が得られた。B型肝炎既往があり、抗がん剤治療終了後もB型肝炎ウイルスDNA検査*²を定期的に行うべきところ、その検査を行っていなかった。抗がん剤治療終了後9ヶ月を経た時期にde novo B型肝炎*³を発症し、他院での入院加療を要した。
*¹ 完全寛解;完治していないが、がんによる症状や検査異常が消失した状態
*² B型肝炎ウイルスDNA検査;血液中のB型肝炎ウイルス量を測定する検査
*³ de novo B型肝炎;B型肝炎既往感染者においてB型肝炎ウイルスが再活性化し肝炎を発症したもの
3.発生事象とその背景
- 抗がん剤治療中あるいは終了後にde novo B型肝炎を発症する例があることが知られており、その対策が「免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン」(以下、ガイドライン)に示されている。
- 特に、リツキシマブを用いた抗がん剤治療はB型肝炎ウイルス再活性化の高危険群とされ、治療中および治療終了後12ヶ月間はB型肝炎ウイルスDNAを月1回検査することがガイドライン上推奨されている。
- 電子カルテで抗がん剤の指示を出す際には、B型肝炎ウイルスDNA検査を促す注意喚起が表示されるようになっているが、抗がん剤治療終了後は、注意喚起の仕組みはなかった。
- 入院治療が終了し外来通院に変更となった際、B型肝炎ウイルスDNA検査の指示が抜け落ちて、その後の通院でも気づくことができなかった。
- 当該例においては、抗がん剤治療終了後の検査が出来ていなかったため、B型肝炎ウイルス再活性化の発見が遅れ、入院治療が必要となった。
4.再発防止策
- 抗がん剤治療終了後も、「定期的にB型肝炎ウイルスDNA検査が必要な症例」を抽出し、B型肝炎ウイルスDNA検査を促すシステムを構築し、検査漏れを防ぐ。
5.その後の当該症例の経過
de novo B型肝炎は抗ウイルス薬投与により改善が得られた。