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医療事故の個別公表(H30.2.19)について
2019/05/10
下記の医療事故のその後の取り組みと当該手術(食道癌手術における頸部腹部同時操作)の再開について
- 日本病院会「医療安全管理者養成講習会」を修了(2018年12月1日)し医療安全管理者として認定された医師が当該科の責任者として医師の医療安全意識の向上を図った。
- 当該科所属医師全員がチームSTEPPSの院内研修を受け、チーム医療の更なる向上を図った。
- 手術に際しては、頸部腹部同時操作であるがリーダーたる術者は1人とし、その医師が手術全体の流れを把握、リーダーシップを発揮すること。具体的には手術前タイムアウトの確実な実施(温存血管、切離血管の確認など)や術中ハドルを組む、閉創時タイムアウトの実施など医師と医師、医師と看護師の連携強化を図ることとした。
以上の取り組みを関連部署、多職種で共有し、問題となった術式を安全に実施できる状況が確認されたので、2019年4月から再開することとした。
医療事故の個別公表
食道癌手術で、胃管再建に必要な右胃大網動静脈を誤って切離し、胃全摘、腸管再建となった
<概要>
1.患者
50代 女性
2.経過
- 食道癌に対し、胸腔鏡下食道亜全摘、2領域郭清、開腹亜全胃管作成、胸骨後経路再建、頚部器械吻合、経胃管的腸瘻造設、胆嚢摘出術を予定していた。
- 手術実施時、頚部担当(2名)と腹部担当(3名)の2チームに分かれて、同時進行で手術を行っていた。
- 腹部操作時に、本来温存すべき右胃大網動静脈を誤って切離し、胃再建ができず胃全摘となり、腸管による再建に変更となった。
- 再建経路が胸骨後から胸骨前に変更となり、再建腸管が前胸骨部皮下を通過することになり、美容的にも患者に不利益になる結果となった。
- 長期的な影響(胃管再建でないことによる生理的、栄養学的不利益)は不明であり、今後、慎重に経過を観察する必要がある。
3.原因
- 食道癌手術実施時、頚部担当と腹部担当に分かれて実施したことで、チーム力を分散させる形になった。
- 胃再建の予定で手術を進めていたが、腹部担当の執刀医が胃切除と勘違いし右胃大網動静脈を切離した。
- 前立ちの若手医師は、執刀医が切離しようとしている血管を認識していたが、切ってよい血管かどうかを進言できなかった。
4.医療事故の程度
レベル 4b 永続的な障害や後遺症が残り、有意な機能障害や美容上の問題を伴う
5.再発防止策
- 食道癌手術の頚部・腹部操作に関しては、当面は同時操作を行わない。
- 胸部操作が終わり、腹部操作を始める際には、改めてタイムアウトを行う。
- 主要血管などを処理する際には、その都度術者と助手が言葉にしながら確認を行う。
- 上下関係を越えて問題点を指摘できる環境を構築するために、Team STEPPS(チームステップス:医療安全文化の醸成を目的として医療の質・安全・効率をより向上させるためのチームワークの形や方法)の研修を受ける。
6.現在の状況
退院し、自宅療養中。原疾患の食道癌の治療は、外来通院により継続。