文字サイズ: 標準 拡大
背景色:

がんゲノムについて

1.がんゲノム医療とは

 がんとは我々の体を構成する細胞の遺伝子に変異がおこり正常な機能を失い、がん細胞に変化することで発症します。どのような変異がおこっているかは癌の種類によって異なり、また同じ種類の癌でも患者さんによって異なります。これが同じ薬を使っても患者さんによって治療効果に差が出る理由です。がんゲノム医療とはがん患者さんから採取したがん細胞の遺伝子変異を調べてそれに適合した薬剤を使うことにより、従来の抗癌剤より高い治療効果を目指す究極の個別化治療とされています。


厚労省資料より

2.がん遺伝子パネル検査

 患者さんから手術や検査で採取したがん細胞を用いて一度に数百個の遺伝子を調べる検査です。遺伝子を一つずつ調べるより短時間で効率的に遺伝子変異を調べることができます。現在がんゲノムプロファイリング検査としてOncoGuideTM NCCオンコパネルとFoundationOne ®CDx、FoundationOne ®LiquidCDxの三つの遺伝子パネル検査が保険診療で実施可能です。

3.がんゲノム医療の提供体制

 2019年より保険診療でのがんゲノム医療が開始されましたが、どこでも受けられるわけではなく、厚労省より指定を受けたがんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院、がんゲノム医療連携病院のみで提供可能です。高知県内では高知大学と高知医療センターががんゲノム医療連携病院に指定されています。

 がん遺伝子パネル検査は患者さんの同意を得た上で、患者さんのがん組織や血液を使用して遺伝子解析を行います。判明した遺伝子変異をエキスパートパネルと呼ばれる専門家会議で変異に適合する治療薬があるかどうかの検討が行われます。その結果に基づいて担当医より患者さんへ適切な治療選択肢が提示されます。結果判明までには約1-2ヶ月かかります。

4.がんゲノム医療の対象となる患者さん

 現時点ではがんゲノム医療はすべてのがん患者さんが受けられるわけではなく様々な要件を考慮した上で、以下の患者さんが対象とされています。

  • 標準治療がないがん種の方(非常に稀ながんなど)
  • 標準治療が終了または終了見込みの方
  • 少なくとも数ヶ月以上の余命が見込まれる方
  • ある程度身の回りのことができ活動性が維持されている方

5.検査費用について

 健康保険が適応される場合、パネル検査実施時に44,000点(3割負担132,000円)、最終的な結果を説明された時に12,000点(3割負担36,000円)をお支払いいただきます。なお普段の診療とあわせて「高額療養費制度」が適応となりますので収入に応じて決められた自己負担分以外は払い戻しを受けることができます。

6.がんゲノム医療の留意点

 究極の個別化治療として嘱望されているがんゲノム医療ですが現段階ではまだ以下のような課題があります。

  • 薬剤に適合した遺伝子変異が見つからない
  • 変異に適合する薬剤がない
  • 採取したがん細胞の保存状態によっては解析不可能なことがある
  • 適合する薬剤があったとしても適応外使用になるため自費診療となる
  • 治験などを行っている施設が遠方で通院できない
  • 偶発的に遺伝性腫瘍であることが判明することがある

 こうした課題のため実際に治療薬まで到達できる患者さんは10%程度とされています。このような様々な課題に対処するためにゲノム医療に対する十分な知識をもった専門医のもとで行うべき医療であると言えます。

7.当院での対応

 当院でがん治療中の方はまず主治医にご相談下さい。がんゲノム医療について詳細を知りたい方は、当院遺伝性腫瘍外来を紹介受診して下さい。他施設で治療中の方でも担当医より遺伝性腫瘍外来を紹介受診いただければ対応可能です。

「がん」は遺伝するのか(PDF:720KB)