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緩和ケアの取り組み

1.緩和ケアとは?

 WHO(世界保健機関)の定義では「緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、適確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、QOL(Quality of life:生活の質)を改善するアプローチ」としています。
 がん患者さんは、病気による症状だけでなく痛みや倦怠感などさまざまな身体的苦痛、気持ちの落ち込み・悲しみなどの精神的な苦痛、仕事への影響や経済的問題など社会的な苦痛、スピリチュアルな苦痛を経験します。これらの苦痛を総じて、全人的苦痛といいます。緩和ケアとは、がんと診断されたときからがん治療と一緒に受ける、全人的苦痛を和らげるためのケアです。
緩和ケア

2.緩和ケアの概要および目標

 緩和ケアは、がんそのものによる症状や治療に伴い生じる苦痛症状(吐き気・嘔吐・痛み・倦怠感など)を緩和し、がん治療に取り組むための力をサポートします。また、患者さんやご家族の不安や心配事、生活上の問題(就労や経済的問題)などを和らげるためのお手伝いをします。
 がんと診断されたときから、緩和ケアチームが主治医や病棟スタッフと協力して、患者さん・ご家族のサポートをさせていただくことで、入院治療生活に伴う不安・苦痛などをできる限り軽減するとともに、治療終了後の患者さんの、その人らしい生き方を選択するためのお手伝いをさせていただきます。

3.緩和ケアチームのご紹介

 がんとともに過ごす中で起こるさまざまな症状に対応するための専門チームが、緩和ケアチームです。緩和ケアチームには、専門分野の医師・がん看護専門看護師・専門薬剤師・ソーシャルワーカー・管理栄養士・理学療法士などが在籍しています。
緩和ケアチーム

医師

 終末期のみならず、がんと診断されたときから抗がん治療中も、主治医・担当医と協力して、患者さん・ご家族の方のさまざまなつらい症状に対応していきます。がんと向き合う皆さんを支えます。

緩和ケアチーム専従看護師

 患者さん・ご家族の方々の不安や悩みを聴かせていただき、少しでもその人らしく過ごすためのお手伝いをさせていただきます。緩和ケアについて看護師からの相談にも対応します。

薬剤師

 使用する薬について副作用や飲み方、使い方など、わからないこと、気になることがあればお気軽にご相談ください。

ソーシャルワーカー・退院支援看護師

 がんと向き合いながら生活を営んでいる患者さんやご家族が安心して治療や療養と日々の暮らしを継続できるようにサポートさせていただきます。
 医療費の相談や療養生活の中での不安、家族や仕事のこと、療養場所の検討、転院・退院支援、在宅サービスの導入、地域の関係機関との連携など、幅広い相談に対応しています。
 「抗がん剤治療が始まるけれど、医療費ってどのぐらいかかるの?何かできる手続きはあるの?」などお気軽にご相談下さい。

管理栄養士

 緩和ケアチーム専任管理栄養士は、フロア担当管理栄養士と連携し、治療による食欲低下などの症状に合わせた食事内容・食形態について調整します。少しでも食べていただけるよう対応させていただきますので、食事・栄養等についてご相談ください。

4.高知医療センターの緩和ケアチームの特徴

 急性期病院としての使命をもつ高知医療センターでの緩和ケアチームの役割は、緩和ケア病棟をもっている病院とは少し異なります。当院でがん治療中の患者さんとご家族を対象に、診断~がん治療期間中に生じる症状や苦痛に対する短期集中型の緩和医療・緩和ケアの専門チームであると言えます。
 緩和ケアチームは、主治医や病棟看護師と協力して緩和ケア的なこころ・発想をもって、患者さんとご家族に接してサポートさせていただきます。がん治療が終了した場合でも、患者さん・ご家族と面談を行い、希望に沿った療養の場の選択をサポートさせていただきます。

5.緩和ケアについて考える時期

 がんに立ち向かうためには、体力と精神力だけでなく周囲のサポートが必要です。緩和ケアは治療と並行して行われます。そして、病状の進行に伴い徐々に緩和ケアのしめる割合が増えていきます。治療が終了を迎えた時でも、患者さん・ご家族が、自分らしくイキイキとした時間を過ごすためにも、身体やこころの苦痛を最小限に抑えていくことが必要です。
 緩和ケアについて考える時期が早すぎるということはありません。がんと診断されたときから緩和ケアについて、一緒に考えていきましょう。

6.緩和ケアチームへの院内対診患者数

 2017年度院内対診患者数は平均12.5人/月でした。緩和ケアチーム介入患者は、入院~外来診療と主科診療と並行して切れ目なくサポートしています。

2017年度 診療科別緩和ケアチーム新規介入依頼患者数 2017/4/1~2018/3/31
2017年度 診療科別緩和ケアチーム新規介入依頼患者数

2017年度 診療科別緩和ケアチーム対診依頼患者数 2017/4/1~2018/3/31
呼吸器内科 歯科口腔外科 耳鼻咽喉科 腫瘍内科 循環器内科 消化器外科
一般外科
消化器内科
19 3 8 61 1 29 6
心臓血管外科 整形外科 総合診療科 乳腺
甲状腺外科
泌尿器科 婦人科 総計
1 1 1 3 5 12 150
 2017年度緩和ケアチーム対診依頼患者数は150人でした。対診依頼患者数は、腫瘍内科・呼吸器内科・消化器外科の順に多いという状況にあります。
2017年度緩和ケアチーム介入目的(重複あり) 2017/4/1~2018/3/31
依頼目的 件数
身体症状緩和 231
精神症状緩和 155
終末期ケア 50
療養の場の調整 64
ソーシャルワーク 59
理学作業療法 7
在宅介護困難 4
その他
その他の内訳
放射線療法中の嚥下痛緩和 1
倫理的問題 1
家族支援 1
KM-CART
 緩和ケアチーム介入目的では、痛み・嘔気・呼吸困難・不眠などの身体症状緩和の依頼が231件と最も多く、次いでがん告知や治療中止による悲嘆や不安・抑うつなどの精神症状緩和が155件と多くみられています。療養の場の調整や問題解決に向けた心理・社会的支援・地域の関係機関との連携などについては、チームのソーシャルワーカーや退院支援看護師と連携し制度および社会資源の活用についてサポートしています。