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新生児部門(小児科・新生児科)

新生児部門(小児科・新生児科)

総合周産期母子医療センター新生児部門は、生まれたばかりの赤ちゃんを診るところです。予定日よりも早く生まれた赤ちゃん、病気を持って生まれてきた赤ちゃんなどの診療を行っています。当センター産科で出生した赤ちゃんだけでなく、他病院で出生した赤ちゃんも対象としています。赤ちゃんたちが入院しているところはNICU (Neonatal Intensive Care Unit; 新生児集中治療室)とGCU (Growing Care Unit;新生児治療回復室)と呼ばれており、当センターには高度医療設備を備えたNICUが12床、その後方病室であるGCUが15床あり、生まれたばかりの赤ちゃんに関する高度かつ総合的な医療を24時間体制で行なっています。



入院対象となる赤ちゃん

体重が小さい(低出生体重児:出生体重2500g未満)
予定日より早く生まれた(早産:在胎37週未満)
生まれてすぐに元気に泣けなかった(仮死)
生まれてすぐ息がしんどかった(呼吸障害)
泣いているけど皮膚の色がよくならない(先天性心疾患)
上手に哺乳ができない、吐く(哺乳不良)
熱がある、元気がない(感染症)
皮膚がすごく黄色い(黄疸)
お母さんのお腹にいるときから何か病気がわかっている(胎児診断されている)
すぐに手術が必要(新生児外科疾患、脳神経外科疾患など)



母体搬送

あらかじめ赤ちゃんが生まれてからNICUに入院することが予想される場合は、赤ちゃんが生まれてから搬送するのではなく、生まれる前にお母さんに当センター産科に移っていただいています。この結果、より高度な母体、胎児集中治療が可能となって、早産を減らすことができ、また生まれた直後から赤ちゃんの治療を開始できるようになります。




新生児搬送

他病院で生まれてから赤ちゃんに問題があることが判明した場合は、赤ちゃんを救急車やドクターヘリで搬送し、NICU/GCUに入院となります。高知県には周産期医療情報システムが整備されており、他病院医師はインターネット上の「搬送受入空床情報」を参考に収容先の病院をよりスムーズに探すことが可能となっています。

NICU(新生児集中治療室)〈実際のNICU/GCUの雰囲気はNICU/GCUの紹介へ〉

NICUには人工呼吸器、保育器、呼吸心拍モニター、酸素飽和度モニター、超音波診断装置などが備えられ、24時間体制で赤ちゃんの呼吸管理、循環管理を中心とした高度集中治療を行うことが可能です。また疾患によっては、小児外科、脳神経外科、心臓血管外科など他科と協力しながら診療を行っています。急性期を乗り切り、全身状態が回復、安定した赤ちゃんはGCUへ転棟となります。

GCU(新生児治療回復室)

赤ちゃんの全身状態が安定してくると、NICUのとなりのGCUに転棟となります。ここではご家族が退院後不安なく育児ができるように、赤ちゃんのケアに参加していただきます。具体的には抱っこ、おむつ交換、検温、授乳(直接母乳哺乳、ビン哺乳)、薬の内服、沐浴などがあげられます。退院後も医療的ケアが必要な赤ちゃん(例えば、お口から上手くミルクが飲めない、痰が多い、息がしんどくて酸素を使う必要があるなど)に対しては、お鼻からいれたチューブから栄養する方法や痰を取る方法、酸素吸入方法などを赤ちゃんの状態に合わせて適宜ご家族に指導させていただいています。ご家族が入院中から積極的に育児参加することで赤ちゃんの状態を把握でき、自宅での赤ちゃんとの関わりがスムーズになると考えています。

母児同室

赤ちゃんがNICU/GCUに入院しているご家族は赤ちゃんと離れて生活している期間が長く、赤ちゃんの退院が決定すると嬉しい反面、不安も大きいと思われますので、ご希望があれば母児同室をして退院していただいています。小児病棟(すこやかA病棟、4階)で1泊または2泊していただき、実際に赤ちゃんと24時間過ごしていただき、ケアをすることで赤ちゃんの状態がより把握でき、ご家族の不安もなくなると思われます。

外来へ

赤ちゃんがNICU/GCUから退院してからも赤ちゃんやご家族と関わりをもち支援していきたい、ということをスタッフ一同心がけて、赤ちゃんの退院後はフォローアップ外来を行っています。また高知県各地域の保健師とも連携して、ご家族が住んでいる地域でのフォローアップにつなげています。







健常な赤ちゃんの診察

多くの赤ちゃんは生まれた後特別な医療的介入を必要としません。しかしなかにはミルクが飲めない、元気がない、呼吸がしんどい、皮膚が黄色くなってきた、などが問題となる赤ちゃんもいます。当センターで生まれた健常な赤ちゃんは生まれた後、産科病棟(すこやかB病棟、4階)でお母さんと過ごされていますが、少なくとも生まれた次の日と退院前日には小児科医師による診察を受けてもらい、赤ちゃんに問題点がないかを確認しています。生まれてすぐには問題がなくても、数日たってから問題がわかることもありますので、赤ちゃんが退院するまで、日々の変化に注意を払い、無事退院できるようサポートしています。

診療内容

新生児手術件数の推移(小児外科)




10年間のNICU入院数




極低出生体重児(1500g未満)の入院数




「周産期医療の質と安全の向上のための研究」に参加しています




1.研究の背景

2003年より構築された「総合周産期母子医療センターネットワークデータベース」により極低出生体重児の治療成績と治療内容に大きな施設間差が存在することが明らかとなり、施設格差を是正することで日本全体の周産期医療の質向上が得られるのではないかとのことで研究は開始されています。

2.研究の概要

介入は『周産期医療質向上プログラム』と称し、
(1) 施設プロファイル
(2) ワークショップ開催
(3) 改善行動計画の策定・実行
(4) 改善行動計画のフォローアップ・支援
から構成される

3.対象

40施設が参加。対象患者は出生体重400-1500gの児です。症例数は約2400名となっています。

4.評価項目

「周産期医療質向上プログラム」を導入する介入施設群と導入しない非介入施設群で、極低出生体重児の修正1歳半、歴3歳時の障害なき生存の割合を主要評価項目とし、各種罹患率や死亡率、組織文化の変容などを含めてアウトカムとしています。

5.方法

介入は施設訪問による双方向性のワークショップ形式を行い、診療内容および医療組織体制の解析結果をフィードバックし、弱点診療項目に関しては根拠と総意に基づく標準的治療の考え方の講義を専門家が行い、以上を踏まえて自施設の改善行動計画を立案・実行するというものをひとつのパッケージとしています。

  • 施設のプロファイルから弱点を改善

  • 28週以下の早産児:48.5%→40.0%
  • 死亡退院:7.1%→3.3%へ(半減!)
  • 仮死児の減少:28.7%→26.7%
  • 新生児遷延性肺高血圧症:16.8%→6.7%(6割減!)
  • 頭蓋内出血:34.7%→10.0%へ(7割減!)
  • 慢性肺障害:52.5%→10.0%へ(8割減!)