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ペインクリニック科

ペインクリニック科とは

★ペインは英語では痛みを意味します★

 痛みは人の身体にとって、さまざまな病気の一つの症状であり、初発症状でもあります。次第に痛みが強くなれば、痛みのため日常の生活に支障をきたします。痛みが続くと、ひいてはもとの病気も悪化するという悪循環を引き起こします。

 しかし、痛みがあるために、癌などが早く見つかり、早く治療ができたため、治癒した人もたくさんおられます。これらの事から、痛みは人の身体にとって、病気の重大性、緊急性を教えてくれる感覚の一つ、大事な警鐘とも言えるでしょう。

 人の身体にとって大事であるが、厄介な痛みをとること、軽くする事により、患者さんのもとの病気の治療に役立つ事がペインクリニック科の最大の仕事です。

ペインクリニック科の病気について

 痛みを生じた病気はすべて対象になります。帯状疱疹後神経痛、複合性局所疼痛症候群などペインクリニック科に特徴的な病気もありますが、大抵の患者さんは最初、三叉神経痛、頭痛などは脳神経外科に、腰痛、頚椎症などは整形外科に、腹痛は内科や外科を受診し、紹介という形で当科を受診されることが多いです。そのため、痛みの治療を続けながら、いつも紹介された科のドクタ-といっしょに病気の治療を行っております。

 当科への受診を希望される場合は、現在通院されている先生に紹介状を作成して頂き、ご受診下さい。

当院のペインクリニック科の特徴

 他科で診察を受けられた時と同様に、最初に問診といって、痛みが生じてからの経過をきかせていただき、次に身体所見をとらせていただきます。そして、もとの病気も同時に診察させていただき、痛みの原因は何か、どの神経支配域の痛みかを診断します。診断がつくと、いかに患者さんに負担をかけず、痛みをとるかを考え、治療に入ります。

 当科では痛みをとるため、神経ブロックという方法を用いる事があります。 神経ブロックという方法は当科に特徴的な治療法で、一時的に、局所麻酔薬で該当する神経からの痛み刺激をブロックし、痛みをとり、痛みの悪循環を断ち切るのが目的です。神経ブロックだけでなく、キシロカインやパルクスの点滴や内服薬なども使用して治療します。 一回の治療で治る痛みもありますが、何回か治療が必要であれば、しばらく通院していただき、治療することになります。

ペインクリニック科での特殊な治療

ボトックス注射による顔面痙攣(けいれん)、眼瞼痙攣などの治療

 顔の表面(眼や唇の周囲など)が痙攣(けいれん)し、痛みはないが、患者さんの日常生活に支障、苦痛を与える顔面痙攣、眼瞼痙攣の治療に、長年の間、顔面神経ブロックを行っておりました。しかし、神経ブロックの侵襲度に比べて、効果は充分でなく、治療に難渋しておりました。 ボトックスとは食中毒の原因となるボツリヌス菌の毒素成分を、体に害がない程度注射できるようにした注射薬です。このボトックスを注射すると、筋肉の収縮に必要なアセチルコリン分泌を阻害することにより、3~4ヶ月の筋肉弛緩を生じ、顔面の痙攣を抑えることができます。当科では顔面痙攣、眼瞼痙攣だけでなく腋窩多汗症などの治療にもボトックスの注射を行っております。

癌性疼痛に対する神経ブロック

 当院の院内や院外から紹介の癌患者さんの痛みに対して、X線透視やCTを用いた腹腔神経叢ブロック、腰部交感神経ブロックなどの神経ブロックを行っております。 また、高周波熱凝固の機械を用いて体神経ブロック、三叉神経ブロックなどの神経ブロックを行っております。この高周波熱凝固の機械を用いることにより、以前からの筋力低下、神経障害などの合併症の程度が軽度ですむようになりました。

難治性疼痛に対する脊髄刺激療法

 脊椎手術後に残る痛みや、難治性の脊柱管狭窄症などの痛みに対して、当科では、脊髄刺激療法を行なっております。刺激する電極を硬膜外腔に挿入し、継続的に電極刺激する事により、痛みをとる方法です。方法は、最初、入院していただき、脊髄刺激電極を挿入し、試験的に7日ほど刺激治療を行います。効果があれば、後日、刺激電極を電池と一緒に埋め込む手術を行ないます。この方法により、今まで、とれなかった痛みや他の神経ブロックでは効果も一時的であった痛みにも、効果がある事が多く、当科では大きな一つの除痛手段として、積極的に取り組んでおります。電極を入れていても、MRIが撮れるMRI対応の電極が発売され、電極埋め込み後もMRI等で経過をみていけます。

漢方薬を用いた痛みの治療、さまざまな身体症状の改善

 東洋医学では“未病”といって、病気と健康体の中間の状態(グレーゾーン)を示す考え方があります。この未病の状態、例えば“冷え”や“なんとなく体調が悪い”などの状態を漢方薬の使用で改善することにより、本格的な病気へ進んでいくのを防ぐ事が出来る事があります。元来の病気が原因で生ずるさまざまな身体症状(微熱、倦怠感、体のほてり、食思不振など)などは西洋薬を用いても改善しにくい症状です。しかしこれらの症状に対して漢方薬を用いると改善することもあり、漢方薬の得意分野でもあるのです。また、西洋薬の方が漢方薬より有効な場合もあり、漢方薬にも改善できない症状もあり、限界もあります。当科では西洋薬と漢方薬を併用し、お互いの長所を生かして治療を行っております。