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乳腺・甲状腺外科

乳腺・甲状腺外科とは

 主に乳がんや甲状腺がんなどの治療を行います。手術だけではなく、薬物療法も担当し、遺伝性乳がん卵巣がん症候群をはじめとする遺伝性腫瘍の診療も行なっています。

乳腺外科の特徴

 乳がんは他のがん種と比べて薬物療法が非常に有効です。乳がんの治療は手術だけではなく、薬物療法(化学療法、ホルモン療法、分子標的治療)や放射線療法など様々な治療手段を用いて最良の治療効果を目指す、集学的治療が行われます。当科では放射線療法科、病理診断科、形成外科、緩和ケア内科など必要に応じて様々な科とも連携を図りながら、常に最新のエビデンスに基づき、都心の乳がん専門病院と同等の世界レベルの診療体系の提供をめざしています。

担当医紹介

科長(乳腺)
高畠 大典
  • 平成8年卒
  • 日本乳癌学会乳腺専門医、指導医、評議員
  • 日本外科学会外科専門医
  • 日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、指導医
  • 乳房再建用エキスパンダー/インプラント責任医師
  • 日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医
  • 日本遺伝性腫瘍学会遺伝性腫瘍専門医
  • 日本遺伝性腫瘍学会家族性腫瘍カウンセラー
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • 検診マンモグラフィー読影認定医
  • 乳がん検診超音波検査実施・判定医
  • 医学博士
医長(甲状腺)
大石 一行
  • 平成17年卒
  • 日本内分泌外科学会 内分泌外科専門医・指導医・評議員
  • 日本甲状腺学会 専門医
  • 日本外科学会 外科専門医、指導医
  • 日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医
  • 日本遺伝性腫瘍学会 遺伝性腫瘍専門医・評議員
  • 日本消化器外科学会 消化器外科専門医
  • 日本消化器病学会 消化器病専門医
  • 日本臨床腎移植学会 腎移植認定医
  • 日本食道学会 食道科認定医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医

乳がん手術症例数

診療について

1.診断

 視触診、マンモグラフィー、超音波検査などで乳がんの疑いがあると判断された場合、病変部の針生検で確定診断を行います。微小な病変や石灰化病変でも吸引式乳房組織診断装置(マンモトーム)を用いてほとんど傷 を残さず診断が可能です。

2.手術

 主に乳房温存術と乳房切除術が行われます。治療成績に差はありませんが乳がんの大きさや広がり、患者さんの希望などを考慮して術式を決定します。しこりが大きく乳房温存術が難しい場合でも手術前に化学療法(術前化学療法)を行う事により温存術が可能になる場合があります。乳房温存術ではできるだけ傷の目立たないきれいな乳房を残せるようoncoplastic surgeryの手法を積極的に導入しています。脇のリンパ節に転移がないと予想される場合は一部のリンパ節だけ取って転移の有無を調べるセンチネルリンパ節生検を行い、術後の生活の質を考慮した手術を心がけています。当科では色素と放射線同位元素(RI)を併用した正確なセンチネルリンパ節生検を行っています。

3.乳房再建について

 希望者に対しては乳房再建術を積極的に行っています。当院は乳房再建用エキスパンダー・インプラント実施施設に認定されています。またインプラントを用いず、筋肉を用いた筋皮弁による再建も行っています。

4.薬物療法

 乳がんの治療において薬物療法は極めて重要です。これらの薬物療法を適切に過不足なく行うことが治癒率向上には欠かせません。乳がん術後の患者さんでは多くの方で薬物療法が必要になります。薬物療法には化学療法(抗がん剤)、ホルモン療法、分子標的治療があります。どの方法を行うかは手術で採取した乳がんを詳しく調べる病理検査の結果から判断します。手術後の再発を防ぎ、治癒率を上げるために行う場合と、すでに遠隔転移がある方や再発した方に対して症状コントロール目的で行う場合の2通りがあります。薬物療法の領域は新規薬剤の導入やガイドラインの改訂なども頻回に行われており、最も進歩が著しい分野です。常に最新の動向を踏まえた最良の治療を心がけています。

5.放射線療法

 薬物療法と同じく、手術後に治癒率を上げるために行う場合と、既に転移がある方や再発した方(骨や脳など)に対して症状コントロール目的に行う場合があります。当院では最新鋭の照射装置を用いて精密で安全な放射線治療が可能です。いずれの場合でも最新のガイドラインに沿った過不足のない照射を心がけています。治療は必要と判断した時に当科より放射線療法科に依頼して行います。

進行再発乳がんの治療について

 初診時にすでに遠隔転移(骨、肺、肝臓など)がある方や手術後に再発してしまった場合、残念ながら治癒させることは困難です。治療の目標は病状をコントロールし、少しでも長く通常の日常生活をおくれるようにすることです。薬物療法が治療の中心となりますが随時、放射線療法科、緩和ケア内科など他科との連携を図りながら治療を行っていきます。患者さんの病状を見極めた適切な薬剤の選択と副作用コントロールが極めて重要で専門医の実力が最も問われる領域です。ホルモン療法、化学療法、分子標的治療をうまく組み合わせながらできるだけ生活の質を落とさずにがんと付き合っていけるようにすることが目標です。進行再発乳がんについては新薬が次々と登場し治療成績は近年著しく向上しています。諦めずに治療を続けていくことが大切です。

薬物療法と妊孕性について

 乳がん術前術後の薬物療法により妊娠しにくくなったり妊娠可能な年齢を逸してしまう事があります。当科では治療終了後の妊娠を希望される方のために生殖医療科と協力し受精卵凍結保存や卵子凍結保存を行っており、可能な限り妊孕性の温存に努めています。

遺伝性乳がん卵巣がん症候群について

 乳がんの大部分は遺伝しないとされていますが、家系内で乳がんが多発していたり、若年発症の場合、遺伝が関与する乳がんの可能性があります。この場合、反対側の新たな乳がんの発症や卵巣がんのリスクも高くなり、さらに親族の乳がん発症リスクも高まる場合があります。確定診断のためには遺伝子検査が重要です。2020年4月より遺伝子検査が保険収載となり遺伝性乳がん卵巣がん症候群の診療が大きく進歩しました。当科では専門医による遺伝カウンセリングを随時行っています。

リンパ浮腫について

 乳がんの手術で腋のリンパ節を切除した場合、術後、患側の上肢が腫れてくるリンパ浮腫が起きることがあります。リンパ浮腫は根本的な治癒は困難ですが症状が軽いうちに適切なケアを行う事で症状の悪化を防ぎ、症状の改善が期待できます。医療リンパドレナージセラピストが適切なアドバイスやケアを行います。お困りの際は乳腺外来またはリンパ浮腫外来へご相談下さい。

その他

 治療に対する不安や治療による外見の変化(脱毛、爪の変形など)についての相談は乳がん看護認定看護師やがん看護専門看護師、がん相談窓口などがサポートします。経済的なご相談については院内のソーシャルワーカーも対応致します。お気軽にご相談下さい。

(2020年12月 文責 高畠大典)

甲状腺外科について

 当院は県内で唯一の日本内分泌外科学会と日本甲状腺学会の認定施設で、両者の専門医が診療しています。当初は甲状腺外科(手術加療が中心)に特化した外来でしたが、現在では患者様の要望もあり、内科治療も一部担当しています。近年外来患者様の増加により、治療のめどが立った方は近隣の医療機関をご紹介させて頂いております。外来待ち時間の減少に努めておりますのでご理解下さいますようお願い致します。

検査について

 甲状腺・副甲状腺全般の診断ができるように各種検査が可能です。主に甲状腺癌をはじめとする甲状腺腫瘍、バセドウ病、橋本病、副甲状腺機能亢進症、甲状腺炎、遺伝性甲状腺疾患などを広く取り扱っています。

手術について

 甲状腺の手術は主に甲状腺腫瘍(良性、悪性)、副甲状腺腫瘍、バセドウ病、橋本病が対象となります。術式については、甲状腺生検、腫瘤核出術、甲状腺部分切除術、甲状腺片葉切除術、甲状腺亜全摘術、甲状腺全摘術、副甲状腺摘出術、副甲状腺全摘術+前腕内自家移植など疾患に応じて選択しています。周囲臓器への浸潤や縦隔リンパ節転移などの進行甲状腺癌に対しても他臓器合併切除や胸骨切開なども併施し積極的に手術を行っています。

悪性手術適応

 穿刺吸引細胞診で悪性もしくは悪性疑いと診断された場合は基本的に手術をおすすめします。特に、1cm以下の甲状腺乳頭癌を微小乳頭癌といいますが、近年超音波機器が発達し、この微小乳頭癌の発見率が上昇傾向にあります。現在では、世界、日本のガイドラインでも微小乳頭癌に対する経過観察(active surveillance)が推奨されています。当院では微小乳頭癌の患者様に対しては経過観察と手術の両者のメリットとデメリットをお伝えした上で選択肢を提示し、患者様に選択して頂くようにしています。

良性手術適応

 (1)3~4cm以上の大きな腫瘍、(2)増大傾向(急速な増大)、(3)圧迫またはその他の症状(嚥下困難、呼吸困難、嗄声など)、(4)美容的問題、(5)悪性が否定できない場合、(6)縦隔内進展、(7)機能性結節、(8)サイログロブリン(Tg)異常高値(1000ng/dl以上)。以上のような患者様を手術適応としています。

バセドウ病手術適応

 (1)抗甲状腺薬の副作用、(2)手術以外の加療に対する治療抵抗性、(3)甲状腺の著明な腫大、(4)悪性腫瘍の合併、(5)早期の確実な寛解を期待する。以上のような患者様を手術適応としています。

手術件数
  • 甲状腺・副甲状腺手術件数
2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
甲状腺 53例 61例 81例 98例 89例 92例 105例
副甲状腺 8例 8例 9例 8例 2例 5例 11例
  • 甲状腺癌手術件数
2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
甲状腺癌 39例 36例 43例 58例 41例 42例 65例
  • バセドウ病手術件数
2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
バセドウ病 3例 2例 3例 6例 5例 9例 6例
術後放射性ヨウ素治療について

 甲状腺癌に対する全摘術後、再発のリスクが高い方、癌の遺残が疑われる方、明らかな遠隔転移を有する方には術後放射性ヨウ素治療(アイソトープ治療、RAI療法、I-131療法、内用療法)をお薦めしています。残念ながら当院では放射性ヨウ素治療を行うことができませんので、県内であれば高知大学附属病院をご紹介させて頂いております。ただし、人数制限により県内で施行できないこともありますので、その際には県外の放射性ヨウ素治療可能施設(大分県、徳島県、愛媛県、岡山県など)をご紹介させて頂きます。

化学療法について

 甲状腺癌に対する化学療法(抗癌剤)はあまり有効性のあるものがありません。未分化癌に対する治療のみ行っています。

分子標的薬について

 甲状腺癌の分野では分子標的薬が3剤保険収載されています。分化型甲状腺癌(乳頭癌や濾胞癌)全摘後で放射性ヨウ素治療抵抗性の局所進行または転移の患者様にはレンバチニブ(レンビマ®)やソラフェニブ(ネクサバール®)が使用可能です。切除不能の髄様癌にはレンバチニブ、ソラフェニブ、バンデタニブ(カプレルサ®)が、切除不能の未分化癌にはレンバチニブが使用可能です。副作用が多く、頻回の外来受診が必要となりますが、安全に処方が可能です。

遺伝性甲状腺疾患について

 多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)(遺伝性髄様癌、原発性副甲状腺機能亢進症)、家族性大腸腺腫症(篩型乳頭癌)、Cowden病、Carney複合、甲状腺ホルモン不応症、ホルモン合成障害など、遺伝医療の対象となる甲状腺疾患は意外と多く存在します。「家族内に甲状腺の病気が沢山いて相談したい」、「遺伝病といわれて心配で詳しく内容を知りたい」、「遺伝学的検査をしてほしい」、「しっかり遺伝カウンセリングをしてもらいたい」など様々な希望にお応えしますのでお気軽にご相談下さい。

副甲状腺疾患について

 原発性副甲状腺機能亢進症、続発性(二次性)副甲状腺機能亢進症の患者様に対して診療を行っています。前者については原因腺が見つからず持続性になっている患者様も含めて詳細な画像検査、手術を行っています。後者については内服や静注薬治療に抵抗性であったり、副作用で中止となった患者様に対して、PTx(2019年2件、2020年5件)という副甲状腺全摘術+前腕内自家移植術を行っています。

セカンドオピニオンについて

 セカンドオピニオンにも対応可能です。当院受診後に県内の施設や県外の甲状腺専門病院の受診を希望される患者様には、セカンドオピニオン目的の紹介状をお渡ししています。また、他院から当院でのセカンドオピニオンを希望される患者様も受け入れております。

術後出血について

 甲状腺手術術後に出血を来すことがまれにあります。頻度は約2%と報告されています。術後出血を予防するために、手術中に止血を十分確認して傷を閉じていますが、それでも出血することがあります。残念なことに全国的にも散発的にこの術後出血による死亡報告例があります。当院でも過去に呼吸停止例がありました。そのため現在当院では、術後出血の早期発見と迅速な処置に関するマニュアルを作成し、再発防止に取り組んでいます。

甲状腺外科に興味がある医師へ

 高知県内に内分泌外科専門医は1名しかおらず、若手の育成が喫緊の課題です。症例豊富な当院であれば、充実した研修ができ専門医取得も可能です。内科疾患も診療していますので、同時に甲状腺専門医も取得できます。県内県外を問いませんので、甲状腺診療に興味を持たれた方がいらっしゃいましたらご連絡下さい。随時見学も可能です。

(2020年12月 文責 大石一行)