超音波スクリーニング検査とは
なぜ超音波検査をするのか?
ヒトは生まれながらにして100人に4-5人の頻度で何らかの生まれつきの病気を持っています。超音波検査では赤ちゃんや胎盤などの形や働きに問題が無いかをチェックし、異常があれば対処方法を考え、準備をして分娩を迎えることが出来ることを目的としています。
どの様なことをするのか?
(1)通常妊婦健診時
妊娠経過中に赤ちゃんの発育(大きさ)が順調であるか、羊水の量、胎盤や臍帯に異常がないかを確認します。日本では慣習的に妊婦健診毎に超音波検査が行われてきましたが、限られた外来時間の中で毎回超音波検査を行うことは効率が良くありません。また、毎回超音波検査を行ったからといって赤ちゃんの予後が良くなることもありません。最近では妊婦健診の度に毎回超音波検査行わない施設もあります。その代わり、以下に示すように妊娠期間中により細かく専門的な超音波検査を行うようになってきています。
(2)妊娠初期超音波スクリーニング検査
妊娠11週0日~13週6日(赤ちゃんの大きさ:頭殿長CRLで45~84mm)の間に施行します。この時期の赤ちゃんを評価することにより、赤ちゃんの染色体の病気(特にダウン症に代表されるトリソミーなど)や体の病気をある程度見つけることが出来ると言われています。ただし、すべてのお母さんが妊娠初期超音波スクリーニング検査の対象になるわけではありません(詳しくは「出生前検査をお考えの妊婦さんへ」を参照ください)。
(3)胎児超音波スクリーニング(妊娠中期)
2019年5月からすべてのお母さんと赤ちゃんを対象に胎児超音波スクリーニング外来として、通常の妊婦健診では数分しか時間を割くことが出来ない超音波検査を、赤ちゃんひとりあたり20~30分かけて行う特殊外来を開設しました。超音波検査で赤ちゃんを評価しやすい妊娠20週~25週前後で行う事が理想です。赤ちゃんのそれぞれのパーツ(頭部、顔面、頚部、胸部、腹部、骨盤、四肢、脊椎、臍帯、胎盤など)を一通りチェックし問題が無いか検索します。特に心臓は先天的な病気が起きやすい臓器であり、赤ちゃんの予後にも大きく関わります。検査費用は6040円(保険適応外、令和2年4月現在)となります。病気の可能性がある場合には胎児超音波精査外来を受診して頂き、さらに時間をかけて状態を評価し、治療方針を決定します。胎児超音波スクリーニング検査は義務ではありませんが、赤ちゃんの情報を少しでも見逃さないようにすべてのお母さんに妊娠期間中1回は行って頂きたいと考えています。
超音波検査による出生前診断は万能ではありません
超音波検査では近年の技術の進歩により、胎児のかなりの事が分かるようになってきました。しかし、万能な検査ではなく、超音波検査で見つからなかった異常が出生後に分かることもあります。また逆に、超音波検査で異常が疑われていても出生後何も異常がないこともあります。超音波検査で異常が疑われると、お母さんや家族は不安を抱えたまま妊娠経過を過ごさなければなりません。言いかえると、超音波検査をしたことで余計な不安を抱える可能性もあることになります。つまり、超音波検査とは「知る必要がある」情報はもちろんのこと、「知る必要がない」情報まで分かってしまう可能性のある検査といえます。
得られた情報の扱いについて
基本的には検査で分かった情報はお母さんと赤ちゃんのものであり、妊娠の継続にかかわるような事や、母児の生命にかかわるような大事な情報は担当医から説明をさせていただきます。しかし、中には「言って欲しくなかったのに」という情報も含まれていることがあります(赤ちゃんの性別だったり、命にはかかわらない小さな病気だったり)。お伝えするべき情報かどうかはある程度担当医の判断に任せていただきたいと思いますが、そういった情報をお母さん自身が知りたいと思っているかどうかは検査をする前に確認しておく必要があります。一度決めた内容を途中で変更することはいつでも可能です。また分からないことがありましたら担当医や看護師にご相談ください。確認が出来ない場合は担当医の判断で、検査で分かった情報についてお伝えするかどうか決めさせていただきたいと思います。