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骨・軟部腫瘍(担当:沼本)

 整形外科では、骨・軟部腫瘍も取り扱っています。一般的に整形外科で腫瘍というイメージがないと思いますが、骨や軟部(筋肉・脂肪など)にも腫瘍ができることがあります。骨・軟部腫瘍は亜型も含めると100種類以上存在し、腫瘍と紛らわしい疾患も数多くあるため、診断・治療には専門的な知識が必要です。
 骨・軟部腫瘍には良性のものと悪性のもの、その中間の性質を持つものがあります。悪性のものは肉腫と呼ばれます。肉腫はきわめて稀な疾患ですが、いわゆる「がん」の一つで、他の臓器などに転移(血流やリンパなどにのって離れた部位に病巣を形成すること)する性質があります。そのため、生命に関わる病気です。

骨腫瘍

 骨腫瘍は、痛み・しこりなどの症状が出て見つかる場合もありますが、多くはけがなどでレントゲンを撮像した際に偶然発見されることが多いです。骨腫瘍には骨腫瘍類似疾患、良性骨腫瘍、原発性悪性骨腫瘍、転移性骨腫瘍があります。疲労骨折、骨髄炎などは画像検査で骨腫瘍と疑われることがあります。

骨腫瘍の種類
骨腫瘍類似疾患
真の腫瘍ではないが、レントゲン上、骨腫瘍のように見える疾患

例: 単純性骨嚢腫、非骨化性線維腫など
良性骨腫瘍
例: 内軟骨腫、骨軟骨腫、類骨骨種など
原発性悪性骨腫瘍(骨にできる肉腫)
例:骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫など
転移性骨腫瘍
他の臓器に発生した癌(肺癌、胃癌、大腸癌など)が、血行性に骨に病巣を形成したもの。
骨腫瘍の診断

 骨腫瘍の診断にはレントゲンが重要です。レントゲンで診断がはっきりしない場合にはCT・MRIなどを追加します。悪性が疑われるものでは生検を行って診断を確認します。

骨腫瘍の治療

 骨腫瘍類似疾患では、骨折しやすいかどうかで治療適応を判断します。骨嚢腫などで骨の強度が低下して骨折を起こしそうな場合や痛みがある場合には手術を考慮します。骨折のリスクがあまりないまたは低い場合にはレントゲンで経過をみるだけで治療は必要ないことが多いです。
 良性骨腫瘍の治療は腫瘍の種類により対応が異なります。頻度の多い内軟骨腫や骨軟骨腫(外骨腫)では、疼痛がなければ特に治療は行わず経過観察のみとします。一方で類骨骨腫のように疼痛を伴う腫瘍では手術を行います。
 悪性骨腫瘍、特に骨肉腫・ユーイング肉腫では化学療法(抗がん剤治療)を早急に開始する必要があります。そのため、画像検査~生検を迅速に行って診断を早期につけます。治療は化学療法、手術、ユーイング肉腫ではこれに加えて放射線治療を組み合わせた集学的治療プロトコールで行います。骨肉腫・ユーイング肉腫は小児に多いため、少子高齢化、過疎化に伴い、当院では年間1~2例程度となっています。

軟部腫瘍

軟部腫瘍の定義

 軟部腫瘍は軟部組織から発生する腫瘍の総称である。全身のあらゆる部位に発生し、皮下・筋間などの線維性結合組織、腱や靭帯などの線維組織、脂肪組織、横紋筋組織、平滑筋組織、血管およびリンパ管組織、滑膜組織などの中胚葉由来の組織と、末梢神経組織などの外胚葉由来の組織が発生母地となる。(軟部腫瘍診療ガイドライン2012)
 →内臓と皮膚・骨をのぞいた体にできる腫瘍のことを言います。全身どこにでもでき、腫瘤(しこり、こぶ)として触れます。良性のものと悪性のもの(肉腫といいます)、その中間のものがあります。頻度としては良性のものが圧倒的に多く、米国の統計では良性100に対して悪性1の頻度とされています。良性腫瘍の多く(脂肪腫・血管腫など)は放置してもよい腫瘍ですが、悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)は放置すると命取りになる疾患です。
 軟部腫瘍は、一部を除いて疼痛などの自覚症状がでることは少ないため多くの方が腫瘤(しこり・こぶ)に気づいて病院・診療所を受診します。

しこり・こぶの診断はどうする?
問診・視診・触診

 いつごろからあるのか?大きくなっているのか?痛みはあるのか?しびれは?発熱はあるのか?
 皮膚の色調変化、しこりの大きさなど
 皮膚としこりの間は動くか?しこりと奥の組織(筋肉・骨など)との間は動くか?しこりの硬さ・圧痛・放散痛など
   腫瘍の性状によりある程度特徴があり、これらの情報は画像検査と併せて診断制度を高めるのに役立ちます。
 (例)数年前からあり、ほとんど大きさが変わらない。柔らかい腫瘤 → 脂肪腫?
 子供のころからある、運動したら腫れて痛くなる。柔らかい腫瘤。 → 血管腫?
 打撲後に急激にしこりが出現して痛みがでた。 → 血腫?
 両側の肩甲骨の下にあって固い腫瘤 → 弾性線維腫?
 数か月前にしこりに気づいた。月単位で大きくなっている。サイズが5cm以上の硬い腫瘤 → 悪性軟部腫瘍?

疼痛は悪性腫瘍のサイン?

 軟部腫瘍のほとんどは悪性を含めて疼痛を伴わないことが多いです。疼痛は一部の腫瘍には特徴的で、悪性腫瘍では神経に浸潤したものなどでは疼痛が出ることがあります。

サイズの大きいものは腫瘍?

 脂肪腫・血管腫を除くと良性腫瘍は5cm未満のものがほとんどとされます。
→ 5cm以上のものは悪性軟部腫瘍の可能性が高いといえます。例外は脂肪腫や血管腫、後腹膜に発生した神経鞘腫など限られます。悪性を念頭に検査・治療を行うことが必要です。
 一方で全国骨・軟部腫瘍登録では、悪性軟部腫瘍の1/4は5cm未満で診断されています。5cm未満でも悪性軟部腫瘍の可能性はあるので注意が必要です。

画像検査

レントゲン

 多くの場合、診断的価値は低いが下記のような一部の腫瘍では診断の補助になる。
 脂肪腫では腫瘍部の透過性の亢進(黒くみえる)がみられる。
 血管腫では、静脈石といわれる円形の石灰化が認められる。滑膜性骨軟骨腫症では、関節内の石灰化病変として描出される。

CT

 レントゲンよりも正確に腫瘍の石灰化や脂肪腫の透過性亢進が診断できる。
MRIに比べて診断的価値は低い。
 悪性の場合は遠隔転移の診断に用いられる。

MRI

 軟部腫瘍診断の一番のキーとなる検査で欠かせない検査。造影剤を使用することでより診断的価値が高まります。
 MRIで診断できる軟部腫瘍・しこりとしては、ガングリオン・滑液包炎・粉瘤(アテローマ)・血腫・膿瘍・神経鞘腫・血管腫などがあります。
 造影していない場合、悪性腫瘍を良性腫瘍と間違える場合も多いため、注意が必要です。

核医学検査 タリウムシンチ

 悪性か良性かの判断に用いる。悪性の場合、治療効果判定にも用いられる。

PET

 悪性か良性かの判断に用いる。悪性の場合、遠隔転移の検索や治療効果判定に用いる。保険適用上は、悪性と確定していることが条件となっています。そのため、用途は限られます。
 以上のような画像検査を行っても、確定診断に至るのは上述したごく一部の種類に限られます。そのほかのものでは、診断確定のためには生検が必要となります。

生検(腫瘍組織の一部を採取して病理組織検査を行う材料を採取すること)

 針生検・切開生検・切除生検があります。

針生検

 局所麻酔でエコー・CTなどで病変の位置を確認して専用の生検針で病変を採取します。採取できる病変のサイズが小さく、診断が困難なこともあります。

切開生検

 手術で切開して腫瘍の一部を採取します。より多くの組織が採取できるため、針生検より確実に診断をつけることができます。

切除生検

 手術で病変全体を切除して病理検査に提出します。良性病変が考えられるごく小さい病変の場合のみ行う方法です。切除後に悪性の診断が出た場合に生検には腫瘍組織を採取して確実に診断をつけることと、診断後の治療計画に悪影響を及ぼさない方法で行う必要があります。そのため、生検から専門的な医療機関で行うことが勧められます。
 生検で得られた腫瘍組織の病理組織診断は骨・軟部腫瘍を専門的に診ている病理医以外では診断が困難なものも多く、良性・悪性の区別も間違うことが多いです。当院では骨・軟部腫瘍の病理診断に長けた病理医が診断しています。

治療法は

 軟部腫瘍の治療は、基本的に外科的治療が主体となります。
ガングリオンなどの腫瘍以外の疾患および脂肪腫などの大きくなるのが非常にゆっくりした良性腫瘍では症状が特になければ経過をみることが可能です。切除する場合、良性のものでは、できるだけ機能障害がでないように切除を計画します。
 悪性腫瘍(軟部肉腫)では切除可能なものでは、早期に手術が必要です。手術に際しては、腫瘍だけを切除する方法(辺縁切除)では再発する可能性が高いため、周囲の正常組織でくるむように切除する広範切除術が適応となります。そのため、切除後には欠損・機能損失がおきるので、形成外科と連携して欠損部の補填・機能再建が必要です。
 軟部肉腫の一部では、抗がん剤治療や放射線治療が適用となることがあります。特に小児に多く発生する横紋筋肉腫では抗がん剤・放射線・手術を組み合わせて治療を計画します。