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大動脈瘤

大動脈瘤とは

 心臓から送り出された血液が全身に送られるための通り道を動脈といいます。その動脈がいろいろな理由で弱くなり、血圧などの力により通常よりも1.5倍以上大きくなってしまった場合、「動脈瘤」と呼ばれます。特に胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤などの大動脈瘤や、腸骨動脈瘤などは破裂した場合大出血に至り、命に係わる危険性が極めて高く、破裂する前に治療することが必要です。

2020年改訂版 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドラインから

動脈瘤の治療方法

 現在の医療では大きくなった動脈瘤を手術以外の方法で治すことは困難です。手術の方法は一般的に人工血管置換術とステントグラフト内挿術があり、当科ではどちらの術式も行っています。

人工血管置換術

 人工血管置換術は動脈瘤を切開し、人工血管に置き換える治療方法です。以前から行われている手術で動脈瘤も切除されるため確実性の高い方法です。一方で開胸・開腹手術となるため侵襲が大きく、傷の痛みや術後一定期間のリハビリが必要になることがあります。


  • 胸骨正中切開での胸部大動脈瘤に対する手術、左開胸での弓部大動脈瘤手術(図4)、胸腹部大動脈瘤に対する人工血管置換術も行っております。
    (図4 Rib-Cross肋骨切開開胸術)

  • また腹部大動脈瘤に対する人工血管置換術では傷の縮小化に取り組んでおり、術後の疼痛軽減、早期食事開始、早期リハビリを行い、短期間での退院、社会復帰を目指しています。
    (従来の腹部大動脈瘤手術切開創)

  • 傷の縮小化

  • 条件によれば上の傷で下記の置換術も可能

ステントグラフト内挿術

 動脈の内側にステントグラフトと呼ばれる針金と人工血管が組み合わされたものを内挿することで瘤内への血流を遮断する方法で足の付け根の小さな傷で手術を行います。開胸手術や開腹手術が不要なため、手術の侵襲は極めて小さく、傷も小さく、手術時間も短い患者さんへの負担が小さい治療法です。術後1週間以内の退院も可能で、早期に社会復帰が可能です。治療方法上、動脈瘤が残る治療方法のため術後の追加治療が必要になる場合や定期的な受診が必要になることがあります。

 胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤、腸骨動脈瘤など多く動脈瘤に対してのステントグラフト内挿術を行っており、ステントグラフト内挿術の指導医も複数名在籍し治療を行っています。また胸部動脈瘤、腹部大動脈瘤に対する分枝再建を伴うステントグラフト内挿術、de-branched TEVAR, de-branched EVARも積極的に行っています。