文字サイズ: 標準 拡大
背景色:

消化器外科・一般外科(胃部門)

胃部門とは

 胃領域の良性・悪性疾患全般を扱い、特に胃がんの外科治療を中心に行っています。胃がん治療は、進行度により内視鏡治療、手術、抗がん剤療法など多様な選択肢があり、最適な治療を受けるためにも正確な診断が重要です。当院では、一人ひとりの患者さんに対して消化器外科、消化器内科、腫瘍内科、放射線科が連携し、正確な診断に基づいた適切な治療が受けられるように心がけています。

胃部門の治療について

 当部門は胃がんを中心として、胃領域の良性・悪性疾患全般を扱っています。
 胃がん罹患者数は全国的に減少傾向にありますが、まだ大腸がんに次いで多い消化器がんの代表の一つです。当院の胃がん手術件数は高知県内で最多であり、低侵襲治療である腹腔鏡手術、ロボット支援下手術も積極的に行っています。胃がん手術における日本内視鏡外科学会技術認定取得医を3名擁しており、高難度の腹腔鏡手術(進行がんに対する手術や胃全摘術など)にも対応しています。
 胃がん以外としては、GISTを代表とする胃粘膜下腫瘍の切除や、食道裂孔ヘルニアに対する修復術、胃潰瘍穿孔などの緊急手術を行っています。ほかにも、嚥下機能の低下などにより経口摂取が困難となった患者さんに対する内視鏡的胃瘻造設術や糖尿病、高血圧などを合併した高度肥満症の患者さんに対する減量・代謝改善手術(腹腔鏡下スリーブ状胃切除術)も行っています。
 高知県は高齢者の患者さんの割合が高く、当院で胃がん手術を受けられる方の約4割が80歳以上です。患者さんが高齢であっても、個々の患者様の全身状態を評価し、可能な限り根治性(がんが治る可能性)の高い治療法を考えて診療しています。

胃がん手術の術式

 胃がんの術式は主に胃を2/3切除する幽門側胃切除術と全部切除する胃全摘術があります。胃全摘術を行うと術後の生活の質(QOL)が下がることが知られており、『残せる胃は残す』という機能温存の考えに基づき、病変の進行度や部位によっては噴門側胃切除術や胃亜全摘術という術式も行っています。

腹腔鏡手術

 腹腔鏡手術では炭酸ガスでお腹を膨らませ、お腹の中に細いカメラ(腹腔鏡)を挿入してモニター画面を見ながら行う手術です(最近は3D画像が得られる腹腔鏡を使用することでより視認性が高まりました)。開腹手術と比べ、傷が小さく、術後の痛みが少なくなど、体にやさしく回復が早いという特徴があり、開腹手術と同等のがんの治療効果があることが証明されており、ガイドラインでも推奨される標準治療となっています。
 当院では、腹腔鏡手術が胃がん手術の約7割を占めています。
 高知県は高齢化が進んでおり、他の病気をお持ちの方が増えてきています。このような患者さんに対しても、低侵襲である腹腔鏡手術は有益と考えています。

ロボット支援下胃切除術

 2023年1月からはロボット支援下胃切除術を導入しています。ロボット支援下手術の利点は、①ロボットアームを介したブレのない手術操作ができること、②多関節鉗子による繊細な剥離操作、縫合操作が可能なこと、③3D高解像度スコープによる極めて精細な画像、などがあります。
 導入後の2年間で63例の方に施行しています。術後合併症(ドレナージチューブの交換や内視鏡などの処置を要するもの)の発生率は3.1%とロボットの特性を活かした安全な手術が可能となっています。

術前・術後化学療法(抗がん剤治療)について

 がんの手術治療において低侵襲性・機能温存(からだに優しい手術)は大切ですが、最も大切なことは『根治性=がんを取りきること』です。取りきることが難しそうな高度進行がんに対しては、手術前に抗がん剤治療 “術前化学療法”を導入し、病変を縮小させたうえで切除する手術を行っています。
 また、手術を行った患者さんでは、病理組織学的診断に基づいて再発リスクを評価し、再発の可能性が高いと考えられる患者さんには再発予防のための“術後補助化学療法”を行っています。

胃がん手術治療の流れ

 胃がん患者さんの場合、外来初診日には治療方針決定のために必要な諸検査を行います。手術適応と判断すれば、なるべく早く手術を受けられるように予定を調整します。がんの進行による症状がある患者さんに対しては準緊急的に手術を行うこともありますし、食事摂取不良により栄養状態が低下している患者さんには、手術まで2週間程度の栄養療法(経腸栄養や中心静脈栄養)を行ってから安全に手術を進めることもあります。

 手術の前日に入院していただき、術後10日前後で退院するという流れを標準としております。入院中は管理栄養士からのアドバイスのもと、胃切除後における食事摂取のトレーニングを積んでいただき、退院後に安心して生活を送れるように準備します。
 退院後は定期的に外来受診をしていただき、その後は全身状態、がん再発のチェックを5年間継続します。併せて管理栄養士による胃切除後に特化した栄養指導を外来で行っており、摂食や栄養面のサポートを受けられる体制を整えています。
 前述のように、再発の可能性が高いと考えられる患者さんには再発予防を目的とした術後補助化学療法を外来で行っています。

胃粘膜下腫瘍の術式

 胃GISTに対しては、腹腔鏡手術や胃内手術(胃の内腔に手術鉗子を挿入して、胃の内側から病変を切除する方法)といった低侵襲手術で切除することを基本としています。巨大なGISTに対する手術経験も豊富にあり、高難度症例に対しても安全に手術を行っています。

高度肥満症に対する減量・代謝改善手術について

 当部門では、2021年より高度肥満症患者さんに対する減量・代謝改善手術(腹腔鏡下スリーブ状胃切除術)を行っています。2024年1月現在までに15名の患者さんに手術を行っています。
 当院は厚生労働省の定めた施設基準を満たしており、保険診療での外科治療が可能です。高度肥満症患者さんにおいて外科治療の良好な減量効果および糖尿病などの合併疾患の改善効果が証明されています。
※減量・代謝改善手術の保険適応基準
① 6か月の内科治療で十分な効果の得られないBMI≧35の高度肥満で、糖尿病、高血圧、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群、非アルコール性脂肪肝疾患のいずれか1つを合併するもの ② 6か月の内科治療で十分な効果の得られない32≦BMI<35の高度肥満で、糖尿病、高血圧、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群、非アルコール性脂肪肝疾患のうち2つ以上合併するもの

手術教育について

 胃がん手術症例数全国的に胃がん症例は減少傾向にありますが、当院は中四国でも有数の手術症例数(年間90件程度)を保持しています。
 外科教育に携わる施設として後進の指導に力を入れており、胃がんに対する腹腔鏡手術の質を保証する日本内視鏡外科学会技術認定審査に4名が合格しています(尾崎2012年、高田2019年、桂2021年、三村2023年)。
 2024年にはロボット支援下胃切除術の手術指導者(プロクター)認定も受けており、今後は若手医師に対するロボット支援下手術教育にも注力していきます。
 現在、上部消化管外科医を目指す医師を募集中です。当院での手術研修にご興味のある方がおられましたら、いつでもご連絡いただけますと幸いです。

経験豊富な専門医の紹介

  名前 専門分野・資格など
医療局長 尾崎 和秀 日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医
日本内視鏡外科学会技術認定医(胃)
日本臨床栄養代謝学会学術評議員
日本臨床栄養代謝学会中四国支部TNT講師
日本がん治療認定医機構認定医
医学博士
医長 高田 暢夫 日本外科学会専門医
日本消化器外科学会専門医・指導医
消化器がん外科治療認定医
日本内視鏡外科学会技術認定医(胃)
JSPEN認定医
手術支援ロボット ダビンチ資格認定医
日本内視鏡外科学会 ロボット支援手術認定プロクター(胃)
NST専門療法士臨床実地修練研修指導責任者
米国消化器内視鏡外科学会(SAGES)FUSE認定医
医学博士
医長 三村 直毅 日本外科学会専門医
日本消化器外科学会専門医
日本内視鏡外科学会技術認定医(胃)