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呼吸器外科

呼吸器外科とは

 当科は、呼吸器疾患を中心に外科的治療(手術)を主に行う科です。 高知県全域、状況によっては県外の患者さんも受け入れており、各地域の医院、病院、施設と連携を保ちながら診療を行っております。

呼吸器外科の病気について

 肺癌、転移性肺腫瘍、自然気胸、続発性気胸、縦隔腫瘍、膿胸、手掌多汗症に対する外科的治療、悪性リンパ腫の生検及び、び慢性肺疾患の胸腔鏡下肺生検、気道狭窄(気管・気管支)、胸部外傷などに対する外科的治療を行っております。

当院の呼吸器外科の特徴

 診療の中心になるのは肺癌ですが、各種の癌の肺転移(転移性肺腫瘍)、自然気胸、続発性気胸、縦隔腫瘍、膿胸、手掌多汗症に対する外科的治療、リンパ腫の生検(縦隔鏡や胸腔鏡下生検)、び慢性肺疾患の胸腔鏡下肺生検、気道狭窄(気管・気管支)に対しての軟性・硬性気管支鏡による気道(気管・気管支)ステント留置等の幅広い呼吸器外科手術を行っています。呼吸器内科と呼吸器外科は、定期的な合同カンファレンスを行い、幅広い視点で患者さんの治療方針を決定しています。病気のみならず社会的背景も含めて全人的に把握し、患者さんやご家族と相談の上、前向きに取り組んでいただける治療を選択・提供するようにしています。
 当院の呼吸器外科・胸腔鏡下手術は、従来のハイビジョンカメラから、2022年4月より、4K-3D-ICG(インドアニングリーン)対応の内視鏡システムに移行しております。また微小な病巣には、従来より手術中にCTを併用しながらの手術ができるようにしております。手術室看護師さん、臨床工学技士さん、放射線技師さんをはじめ各部署のスタッフの協力のもと、精度の高い手術ができるようになっています。 肺癌においては、小さな肺癌に対してはなるべく肺機能を温存した区域切除や部分切除といった縮小手術、低侵襲の胸腔鏡下手術などを行っています。ロボット支援下手術も、2023年1月27日に導入いたしました。かなり進んだ肺癌に対しても術前化学療法(抗がん剤治療)、術前放射線療法などを組み合わせて、拡大手術を行っています。成績のよい治療を選択することが望ましいですが、体力的な問題、経済的な問題、体質などの問題などで適応できない方もおられます。これらを考慮しての治療を提供するようにしております。
 通常の肺癌切除、自然気胸、縦隔鏡検査、気道ステント治療、化学療法(抗がん剤)にはクリニカルパスを導入し、標準的な医療を目指しています。肺癌の肺葉切除術・区域切除術では、順調に経過すれば、術後1週間から10日間で退院できるようになっています。化学療法(抗がん剤)は、通院治療を主体に提供できるようにしております。
 肺癌の手術的治療の前後、肺癌の再発・転移には、化学療法(抗がん剤治療)がしばしば併用されます。これらに対しても、最新の情報に基づいて治療効果や有害事象を解説し、患者さんが最も望まれる形での治療を選択させて頂いております。また当院は、がん診療連携拠点病院およびゲノム医療連携拠点病院でもあります。身近なところでがんに対する情報が得られ、専門のがん治療が受けられると共に、地域の医療機関と適切な連携をとりながら社会的役割が果たせるようにしております。
 当科のスタッフには、以下に示す通り各学会等の専門医・指導医が在籍し、呼吸器診療の専門医が診療を行っております。

診療スタッフ紹介

専任スタッフ
岡本 卓

平成7年卒
日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医・指導医・評議員
日本外科学会 外科専門医・指導医
日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医・指導医・評議員
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
肺がんCT検診認定医師
臨床研修指導医
難病指定医
がん診療に携わる医師のための緩和ケア研修会修了
手術支援ロボット ダビンチ資格認定医(執刀医資格)

張 性洙

平成13年卒
日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医・評議員
日本外科学会 外科専門医・指導医
日本呼吸器学会 呼吸器指導医
臨床研修指導医
難病指定医
がん診療に携わる医師のための緩和ケア研修会修了
手術支援ロボット ダビンチ資格認定医(執刀医資格)

吉田 千尋

平成21年卒
日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医・評議員
日本外科学会 外科専門医
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
臨床研修指導医
難病指定医
がん診療に携わる医師のための緩和ケア研修会修了
手術支援ロボット ダビンチ資格認定医(執刀医資格)

手術実績

呼吸器外科手術実績
手術実績 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
肺癌 69 82 105 102 92 77 98 72 93 97 143
転移性肺腫瘍 18 38 27 23 28 36 27 33 27 36 30
縦隔腫瘍 16 8 14 8 17 11 13 5 10 11 15
気胸 27 21 16 19 18 16 27 11 18 14 17
膿胸 0 3 6 5 3 5 5 5 7 2 8
外傷 6 1 1 6 2 2 2 3 1 5 2
ステントやインターベンション 5 4 4 3 7 8 9 5 6 9 4
その他 17 30 40 30 27 19 10 20 19 28 15
合計 158 187 213 196 194 174 191 154 181 202 234
呼吸器外科手術成績(2005~2023)
短期成績
成績 その他
—肺癌—
手術死亡率*   0.06%(1/1501)
在院死亡率** 0.26%(4/1501)        
日本胸部外科学会による全国集計※では、肺癌切除患者の
 手術死亡率 0.3%
 院内死亡率 0.5% と報告。

※ Thoracic and cardiovascular surgeries in Japan during 2019 : Annual report by the
  Japanese Association for Thoracic Surgery.Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2023 ;71(10):595-628.
*  手術死亡率(術後30日以内の死亡)
** 在院死亡率(術後30日以降も含めた在院死亡)

長期成績

2005年3月~2014年3月肺癌治療成績(5年生存率)
観察期間中央値 41ヶ月

病理病期 当院 全国集計*
IA 86.1%(271例) 86.8%(4978例)
IB 78.5%(121例) 73.9%(2552例)
IIA 66.4%(56例) 61.6%(941例)
IIB 49.0%(28例) 49.8%(848例)
IIIA 40.2%(51例) 40.9%(1804例)
IIIB 14.3%(7例) 27.8%(106例)
IV 35.7%(19例) 27.9%(434例)

*2004年肺癌外科切除例の全国集計に関する報告:肺癌登録合同委員会
  日呼外会誌25巻1号頁107-123(2011年1月)より改編

文責 胸部疾患診療部長 岡本 卓 2024年1月