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乳腺・甲状腺外科

乳腺・甲状腺外科とは

 乳腺疾患や甲状腺疾患に対する治療を担当します。手術以外に内服治療、薬物治療(化学療法、分子標的治療)、放射線治療なども扱っています。遺伝性乳癌卵巣症候群や多発性内分泌腫瘍症等の遺伝性腫瘍の診療も行っています。
2024年4月以降は常勤医不在のため乳腺疾患の手術は行っておりません。
現在、当院麻酔科医減少による手術枠縮小にともない、甲状腺手術の待ち時間が約2ヶ月程度となっています。状況に応じて土佐市民病院や幡多けんみん病院に紹介の上、手術を行っていますのでご理解の程よろしくお願いします(甲状腺担当の大石が紹介先の手術に入りますので手術内容に変わりはありません)。

担当医紹介

科長(甲状腺)
大石 一行
  • 平成17年卒
  • 日本内分泌外科学会 内分泌外科専門医・指導医・評議員
  • 日本甲状腺学会 専門医
  • 日本乳腺甲状腺超音波医学会 甲状腺超音波ガイド下穿刺診断専門医
  • 日本外科学会 外科専門医・指導医
  • 日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医
  • 日本遺伝性腫瘍学会 遺伝性腫瘍専門医・評議員
  • 日本消化器外科学会 消化器外科専門医・指導医
  • 日本消化器病学会 消化器病専門医
  • 日本臨床腎移植学会 腎移植認定医
  • 日本食道学会 食道科認定医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
非常勤(乳腺)
高畠 大典
  • 平成8年卒
  • 日本外科学会 外科専門医・指導医
  • 日本乳癌学会 乳腺専門医・指導医
  • 日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医
  • 日本遺伝性腫瘍学会 遺伝性腫瘍専門医
  • 日本癌治療認定医機構 がん治療認定医
  • 検診マンモグラフィ読影認定医
  • 乳房再建エキスパンダー/インプラント責任医師
突沖 貴宏
  • 平成22年卒
  • 日本外科学会 外科専門医
  • 日本乳癌学会 乳腺認定医
  • 検診マンモグラフィー読影医
吉岡 遼
  • 平成25年卒
  • 日本外科学会 外科専門医
  • 日本乳癌学会 認定医
  • 日本乳癌学会 乳腺専門医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • マンモグラフィ読影認定医
  • 検診超音波検査実施・判定医
  • 日本オンコプラスティックサージャリー学会乳房再建用エキスパンダー/インプラント実施医師

甲状腺外科

 当院は日本内分泌外科学会と日本甲状腺学会の認定施設で、両者の専門医が診療しています。当初は甲状腺外科(手術加療が中心)に特化した外来でしたが、現在は患者様の要望もあり、内科治療も担当しています。近年外来患者様の増加により、治療の目途が立った方は近隣の医療機関を御紹介させて頂いております。外来待ち時間の減少に努めておりますのでご理解下さいますようお願い致します。
現在、当院麻酔科医減少による手術枠縮小にともない、甲状腺手術の待ち時間が約2ヶ月程度となっています。状況に応じて土佐市民病院や幡多けんみん病院に紹介の上、手術を行っていますのでご理解の程よろしくお願いします(甲状腺担当の大石が紹介先の手術に入りますので手術内容に変わりはありません)。

検査

 甲状腺・副甲状腺全般の診断ができるように各種検査が可能です。主に甲状腺癌をはじめとする甲状腺腫瘍、バセドウ病、橋本病、副甲状腺疾患、甲状腺炎、遺伝性甲状腺疾患などを広く取り扱っています。

手術

 甲状腺の手術は主に甲状腺腫瘍(良性、悪性)、副甲状腺腫瘍、バセドウ病、橋本病が対象となります。術式については、甲状腺生検、腫瘤核出術、甲状腺部分切除術、甲状腺片葉切除術、甲状腺亜全摘術、甲状腺全摘術、副甲状腺摘出術、副甲状腺全摘術+前腕内自家移植など疾患に応じて選択しています。周囲臓器への浸潤や縦隔リンパ節転移などの進行甲状腺癌に対しても他臓器合併切除や胸骨切開などを併施し、積極的に手術を行っています。

<悪性手術適応>
 穿刺吸引細胞診で悪性もしくは悪性疑いと診断された場合は、手術による切除をおすすめしています。ただし、1cm以下の甲状腺乳頭癌(微小乳頭癌)については昨今経過観察(active surveillance)が推奨されています。そのため、微小乳頭癌に対しては経過観察と手術の選択肢を提示し、患者様に選択して頂くようにしています。甲状腺原発悪性リンパ腫に対しては生検を行いその後化学療法を行います。

<良性手術適応>
 (1)3~4cm以上の大きな腫瘍、(2)増大傾向(急速な増大)、(3)圧迫またはその他の症状(嚥下困難、呼吸困難、嗄声など)、(4)美容的問題、(5)悪性が否定できない場合、(6)縦隔内進展、(7)機能性結節、(8)サイログロブリン(Tg)異常高値(1000ng/dl以上)。以上のような患者様を手術適応としています。

<バセドウ病手術適応>
(1)抗甲状腺薬の副作用、(2)手術以外の加療に対する治療抵抗性、(3)甲状腺の著明な腫大、(4)悪性腫瘍の合併、(5)早期の確実な寛解を期待する。以上のような患者様を手術適応としています。

<内視鏡甲状腺手術>
 甲状腺・副甲状腺に対する内視鏡手術(VANS: video-assisted neck surgery)は整容性に優れた術式で保険収載されています。通常の襟状切開と呼ばれる前頸部の切開では傷跡が目立ちますが、VANSでは鎖骨下に小切開をおくため術後に襟の広い衣服でも隠れることから美容上優れています。当院ではVANS発祥の日本医科大学より指導者を招聘し、内視鏡手術手技の向上を図ってきました。内視鏡下甲状腺部分切除術、腺腫摘出術、バセドウ病甲状腺全摘(亜全摘)術(両葉)、副甲状腺腺腫過形成手術に関する施設基準、更には内視鏡下甲状腺悪性腫瘍手術に関する施設基準を満たし、施設認定を取得しました。現在は、特に若年女性で整容性を重視する方を中心に保険診療として実施しております。

手術件数
  • 甲状腺・副甲状腺手術件数

  • 甲状腺癌手術件数

  • バセドウ病手術件数

術後放射性ヨウ素治療

 甲状腺癌に対する全摘術後、再発のリスクが高い方、癌の遺残が疑われる方、明らかな遠隔転移を有する方には術後放射性ヨウ素治療(アイソトープ治療、RAI療法、I-131療法、内用療法)をお薦めしています。当院では放射性ヨウ素治療を行うことができませんので、県内での治療を御希望であれば高知大学附属病院をご紹介させて頂いております。ただし、人数制限により県内で施行できないことや待機期間が長い場合もありますので、その際には県外の放射性ヨウ素治療可能施設(大分県、徳島県、愛媛県、岡山県など)をご紹介させて頂きます。

化学療法

 甲状腺癌に対する化学療法(抗癌剤)はあまり有効性のあるものがありません。未分化癌に対する治療のみ行っています。

分子標的薬

 全摘後の根治切除不能分化型甲状腺癌(乳頭癌や濾胞癌)で放射性ヨウ素治療抵抗性の局所進行または転移症例、根治切除不能の髄様癌や未分化癌症例に対して、レンバチニブ(レンビマ®)、ソラフェニブ(ネクサバール®)、バンデタニブ(カプレルサ®)が保険診療で使用可能です。近年、セルペルカチニブ(レットヴィモ®)、ラロトレクチニブ(ヴァイトラックビ®)、エヌトレクチニブ(ロズリートレク®)、ダブラフェニブ(タフィンラー®)、トラメチニブ(メキニスト®)、エンコラフェニブ(ビラフトビ®)、ビニメチニブ(メクトビ®)が保険適応となりました。後者については遺伝子の変異を確認し、変異があれば使用可能です。

免疫チェックポイント阻害薬

 MSI(マイクロサテライト不安定性)-highやTMB(tumor mutation burden)-highの症例に対してペンブロリズマブ(キードルーダ)が保険適応となっています。根治切除不能甲状腺癌の患者さんに対しては適応があるかどうか検査を行っています。

甲状腺癌に対する遺伝子パネル検査

 2019年に様々な癌において、標準治療が終了もしくは終了見込みの段階で、遺伝子パネル検査(包括的がんゲノムプロファイリング検査:CGP)が保険適応となりました。根治切除不能甲状腺癌に対して、放射性ヨウ素治療やレンバチニブ、ソラフェニブ、バンデタニブ等の治療が終了もしくは終了見込みの時点でCGPを行っています。甲状腺癌ではBRAF変異、RET変異の他、RET融合遺伝子、NTRK融合遺伝子、ALK融合遺伝子等が陽性となることが知られており、それぞれの遺伝子の変異に応じて、保険適応、治験、臨床試験、患者申出療養などにより有効な分子標的薬に到達できる可能性があります。これまでに当院では14例の甲状腺癌症例に対してCGPを行い、11例(78.6%)で薬剤候補が挙がり、最終的に3例(21.4%)で新たな薬剤治療に到達しています。これは、様々な癌腫全体の治療到達率9.4%と比較すると高く、当科では甲状腺癌において積極的にCGPを導入しています。

甲状腺癌に対するコンパニオン診断

 ある治療薬が癌に効果があるかどうか治療前に検査を行うことをコンパニオン診断といいます。2022年6月にオンコマインが、2023年11月にメブジェン™ BRAF3キットが甲状腺癌に使用できるようになりました(2024年内にメブジェンBRAF2キットも追加予定)。これによりRET変異、RET融合遺伝子、BRAF変異を確認し、セルペルカチニブやダブラフェニブ+トラメチニブ、エンコラフェニブ+ビニメチニブの治療適応の判定を補助できるようになりました。当科ではこれまでに18例の甲状腺癌にオンコマインを使用し、3例(16.7%)でセルペルカチニブを使用しています(CGPと合わせると5例(15.6%))。特にセルペルカチニブについては未治療例に対する奏功率の高さより、初回治療の薬剤選択目的にオンコマインを使用するようにしています。

遺伝性甲状腺疾患

 多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)(遺伝性髄様癌、原発性副甲状腺機能亢進症)、1型(MEN1)(原発性副甲状腺機能亢進症)、家族性大腸腺腫症(篩型乳頭癌)、Cowden病、Carney複合、甲状腺ホルモン不応症、ホルモン合成障害など、遺伝医療の対象となる甲状腺疾患は意外と多く存在します。「家族内に甲状腺の病気が沢山いて相談したい」、「遺伝病といわれて心配で詳しく内容を知りたい」、「遺伝学的検査をしてほしい」、「しっかり遺伝カウンセリングをしてもらいたい」など様々な希望にお応えしますのでお気軽に御相談下さい。

副甲状腺疾患

 原発性副甲状腺機能亢進症、二次性(腎性)副甲状腺機能亢進症、三次性(腎移植後)副甲状腺機能亢進症の診療をしています。原発性については原因腺が見つからず持続性になっている患者様も含めて詳細な画像検査の上で、再手術を行っています。二次性については内服や静注治療に抵抗性、副作用で中止となった方を対象に、PTx(2019年2件、2020年5件、2021年1件、2022年2件、2023年0件)という副甲状腺全摘術+前腕内自家移植術を行っています。

セカンドオピニオン

 セカンドオピニオンにも対応可能です。当院受診後に県内の施設や県外の甲状腺専門病院の受診を希望される患者様には、セカンドオピニオン目的の紹介状をお渡ししています。また、他院から当院でのセカンドオピニオンを希望される患者様も受け入れております。

術後出血

 甲状腺手術術後に出血を来すことがまれにあります。頻度は約2%と報告されています(当院1.5%)。術後出血を予防するために、手術中に止血を十分確認して傷を閉じていますが、それでも出血することがあります。残念なことに全国的にも散発的にこの術後出血による死亡報告例があります。当院でも過去に呼吸停止例がありました。そのため現在当院では、術後出血の早期発見と迅速な処置に関するマニュアルを作成し、再発防止に取り組んでいます。

甲状腺外科に興味がある医師へ

 高知県内に内分泌外科専門医は1名しかおらず、若手の育成が喫緊の課題です。症例豊富な当院であれば、充実した研修ができ専門医取得も可能です。内科疾患も診療していますので、同時に甲状腺専門医も取得できます。県内県外を問いませんので、甲状腺診療に興味を持たれた方がいらっしゃいましたらご連絡下さい。随時見学も可能です。

 

乳腺外科

 乳がんは他のがん種と比べて薬物療法が非常に有効です。乳がんの治療は手術だけではなく、薬物療法(化学療法、ホルモン療法、分子標的治療)や放射線療法など様々な治療手段を用いて最良の治療効果を目指す、集学的治療が行われます。
2024年4月以降は常勤医不在のため乳腺疾患の手術は行っておりません。手術が必要な方には手術可能な施設を適宜ご紹介させて頂いております。

診療について

1.診断
 視触診、マンモグラフィ、超音波検査などで乳がんの疑いがあると判断された場合、病変部の針生検で確定診断を行います。微小な病変や石灰化病変でも吸引式乳房組織診断装置(マンモトーム)を用いてほとんど傷を残さず診断が可能です。

2.薬物療法
 乳がんの治療において薬物療法は極めて重要です。これらの薬物療法を適切に過不足なく行うことが治癒率向上には欠かせません。乳がん術後の患者さんでは多くの方で薬物療法が必要になります。薬物療法には化学療法(抗がん剤)、ホルモン療法、分子標的治療があります。どの方法を行うかは手術で採取した乳がんを詳しく調べる病理検査の結果から判断します。手術後の再発を防ぎ、治癒率を上げるために行う場合と、すでに遠隔転移がある方や再発した方に対して症状コントロール目的で行う場合の2通りがあります。薬物療法の領域は新規薬剤の導入やガイドラインの改訂なども頻回に行われており、最も進歩が著しい分野です。常に最新の動向を踏まえた最良の治療を心がけています。

3.放射線療法
 薬物療法と同じく、手術後に治癒率を上げるために行う場合と、既に転移がある方や再発した方(骨や脳など)に対して症状コントロール目的に行う場合があります。当院では最新鋭の照射装置を用いて精密で安全な放射線治療が可能です。いずれの場合でも最新のガイドラインに沿った過不足のない照射を心がけています。治療は必要と判断した時に当科より放射線療法科に依頼して行います。

進行再発乳がんの治療について

 初診時にすでに遠隔転移(骨、肺、肝臓など)がある方や手術後に再発してしまった場合、残念ながら治癒させることは困難です。治療の目標は病状をコントロールし、少しでも長く通常の日常生活をおくれるようにすることです。薬物療法が治療の中心となりますが随時、放射線療法科、緩和ケア内科など他科との連携を図りながら治療を行っていきます。患者さんの病状を見極めた適切な薬剤の選択と副作用コントロールが極めて重要で専門医の実力が最も問われる領域です。ホルモン療法、化学療法、分子標的治療をうまく組み合わせながらできるだけ生活の質を落とさずにがんと付き合っていけるようにすることが目標です。進行再発乳がんについては新薬が次々と登場し治療成績は近年著しく向上しています。諦めずに治療を続けていくことが大切です。

薬物療法と妊孕性について

 乳がん術前術後の薬物療法により妊娠しにくくなったり妊娠可能な年齢を逸してしまう事があります。当科では治療終了後の妊娠を希望される方のために生殖医療科と協力し受精卵凍結保存や卵子凍結保存を行っており、可能な限り妊孕性の温存に努めています。

遺伝性乳がん卵巣がん症候群について

 乳がんの大部分は遺伝しないとされていますが、家系内で乳がんが多発していたり、若年発症の場合、遺伝が関与する乳がんの可能性があります。この場合、反対側の新たな乳がんの発症や卵巣がんのリスクも高くなり、さらに親族の乳がん発症リスクも高まる場合があります。確定診断のためには遺伝子検査が重要です。2020年4月より遺伝子検査が保険収載となり遺伝性乳がん卵巣がん症候群の診療が大きく進歩しました。当科では遺伝カウンセリングを随時行っています。

その他

 治療に対する不安や治療による外見の変化(脱毛、爪の変形など)についての相談は乳がん看護認定看護師やがん看護専門看護師、がん相談窓口などがサポートします。経済的なご相談については院内のソーシャルワーカーも対応致します。お気軽にご相談下さい。

(2024年6月 文責 大石一行)

学会発表および論文

2024.6学会・研究会発表業績集

2024.01誌上発表業績集

関連施設認定

  • 日本外科学会外科専門医制度修練施設
  • 日本内分泌外科学会専門医制度認定施設
  • 日本甲状腺学会認定専門医施設